「…おみねっ、青峰!」
「ん?ああ、なんだよ緑間」
「なんだよはこっちの台詞なのだよ。いつまでボーっとしてるのだよ」
緑間はため息をついて青峰を見る。
「いやーついつい昔を思い出してな」
「……ふん。さっさと屋敷に帰るのだよ。お前のせいでこんなに遅くなってしまった」
空を見るともう、真っ暗く電灯も少ないので夜空に輝く星が綺麗に見える。
三日月も大分上のほうにまで昇っている。
「この景色もこの1000年の間で変わったな」
青峰がポツリと呟いた。
「…当たり前なのだよ。時代が変わったのだからな」
「そうなんだけどよー」
「無駄口を開いてないでさっさと帰るのだよ。赤司に怒られたくないだろう?」
「げえー。赤司のお仕置きは嫌だぜ」
「だったら、ちんたらしてないでさっさと歩くのだよ!!!」
その二人は月明かりに照らされながら屋敷へと歩いていった。
その近くの大樹の枝に一人の青年が座っていた。
その青年は、先ほど二人と合い間見えた人物だ。
「…さすが、懐刀の二人や。ほんま強かったわー」
すると、青年の近くにある気配がした。
「――今吉、」
「!!……主」
「手も足も及ばなかったの?」
主と呼ばれた青年は、まるで先ほどのことを知っているかのように話した。
「はい。ワシも力不足やったわ」
「…そう。だったら、戻るよ」
青年は、木から飛び降り、主の後ろからついていく。
「そっちはだうだったんや?」
「……順調だったよ。記憶も少しずつ思い出せてるみたいだし」
「ほんま、主って罪深きお人やね。今の世の中じゃ通用せんとちゃうの?」
「そんなの関係ないよ。名前は、俺のもの。これは生まれた日から決まってるのだからね」
綺麗な微笑を今吉に向ける。
今吉は、食えない人だなと思った。
「…一番恐ろしい人やね、辰也様って。欲しいもののためなら何でもしてしまうんやね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そう、辰也は笑って返した。