世界の中心の姫君

青峰と緑間の前にいる青年。
にたりと笑っている。


「ほんま、最強やっちゃな」


「当たり前だろ?名前にこの力を授けてもらったんだからよ」


「ふーん、姫さんになあ」


「…青峰、いつまでぐずぐずしているのだよ。本気を出せ。そろそろ名前が心配してるのだよ」


「ああん?緑間ーいいとこなんだぜー、今」


青峰は、はあとため息をつき、頭をかいた。


「だけどまー、名前が心配してそーだから、本気でやるか」


「…(今までが本気じゃなかったんか…!!)」


「悪いな、お兄サン。名前には、弱いんだわ」


青峰は、刀を強く握り締めた。


「おら、行くぞ!!」


斬りかかってきた青峰に青年はすばやく刀を抜き受け止める。


「ほんま、松奏院家は嫌やわー。能力がやっかいやで」


「だったら、さっさと逃げるんだな!」


「逃げたいんやけど、主が許してくれへんから…」


青年は、青峰と一旦間を取る。


「そして、ワシも自分の興味には忠実でのー。一目でもいいから逢いたいやんか。その、松奏院家の姫さん…『世界の中心のお姫様』って…その姫さんを中心に世界が動いてるんやからなあ」


「無駄口を叩くのではないのだよ。名前は、お前のような平民が見てもいい存在ではないのだよ」


「…えらい、崇めとるんやなあ」


緑間は、くいっとメガネを上げる。


「当たり前なのだよ。名前なくしては、この村もこの世界も…そして俺たちも存在意義を失ってしまうのだからな」


「ますます逢いたなってきたわ、その姫さん」


―やけど、時間やね。
青年は、そう言って霧のように消えていった。


「…っ!!!待てよ!」


「堪忍な。ほな、また今度遊ぼかね」


その声だけが響いたのであった。


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