ずっと待ってた辛さに比べたら

「―なんでって、そりゃあ、血の繋がりに決まってんじゃん」


私の中の何かが崩れたような音がした。


「え、私とテツヤって血が繋がってるの…?」


「そうだよー。ってあれ、ああ、名前ちん記憶ないんだっけ?」


ぼりぼりと敦がお菓子を食べる音だけが私の中で聞こえた。
テツヤと涼太と征十郎は何か話しこんでいる。


「…記憶、ないけど…けど、なんか分かるかも…テツヤと血が繋がってるの」


なんか、懐かしい。
なぜかそう感じる。


「…ねえ、名前ちん」


「ん?」


「俺、幸せだよ?」


「え?」


「だから、俺、幸せだよ」


そう言って、敦は私の頭を一撫でしてから、家の中へと入っていった。
…なんで、敦はそんなこと言ったのだろう。


「名前」


「あ、テツヤ…」


「名前、すみません。僕としたことが取り乱してしまいました」


「ううん、いいよ。なんか、私も記憶取り戻したいなって思ったし…」


私がそう口にするとテツヤは、少し微笑んだ。


「…そうですか。良かったです」


「うん。もっとあなたたちのことや私のこと知りたくなったし」


「そう言ってもらえると、嬉しいです」


わたしとテツヤは、夕飯が出来てるらしいから建物の中へと入った。


***********


「……赤司っち」


「なんだい?涼太」


黄瀬は、腕を組んでいる赤司へと声をかけた。


「……見てて大丈夫なんスか?」


「…何が、かな?」


「っ、だから名前っちっスよ!名前っち記憶ないって…」


黄瀬は、赤司のオッドアイで見つめられ言葉を止める。


「…きつくないって言ったら嘘になるが、もうそんなことどうでもいいんだよ。姫様がまた僕らの…僕の目の前に現れてくれたんだから」


「赤司っち…」


「1000年以上も待ったんだ。もう、離す気も離される気もないよ」


「…そうっスか」


黄瀬の手が無意識に握られる。


「僕らは、必ずしも姫様に愛情を抱いている、それがどんな情でもね」


「そうかも、っスね」


「だろう?もう姫様から離れられない身体になってるんだよ」


すると、どこから名前の「ご飯食べよー」という声が聞こえた。


「――ああ、姫様が呼んでいるからこの話は終わりにしよう、涼太」


「そうっスね…」


赤司の言葉に苦笑いを浮かべた涼太は、一緒に屋敷の中へと入って行った。

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