「―なんでって、そりゃあ、血の繋がりに決まってんじゃん」
私の中の何かが崩れたような音がした。
「え、私とテツヤって血が繋がってるの…?」
「そうだよー。ってあれ、ああ、名前ちん記憶ないんだっけ?」
ぼりぼりと敦がお菓子を食べる音だけが私の中で聞こえた。
テツヤと涼太と征十郎は何か話しこんでいる。
「…記憶、ないけど…けど、なんか分かるかも…テツヤと血が繋がってるの」
なんか、懐かしい。
なぜかそう感じる。
「…ねえ、名前ちん」
「ん?」
「俺、幸せだよ?」
「え?」
「だから、俺、幸せだよ」
そう言って、敦は私の頭を一撫でしてから、家の中へと入っていった。
…なんで、敦はそんなこと言ったのだろう。
「名前」
「あ、テツヤ…」
「名前、すみません。僕としたことが取り乱してしまいました」
「ううん、いいよ。なんか、私も記憶取り戻したいなって思ったし…」
私がそう口にするとテツヤは、少し微笑んだ。
「…そうですか。良かったです」
「うん。もっとあなたたちのことや私のこと知りたくなったし」
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
わたしとテツヤは、夕飯が出来てるらしいから建物の中へと入った。
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「……赤司っち」
「なんだい?涼太」
黄瀬は、腕を組んでいる赤司へと声をかけた。
「……見てて大丈夫なんスか?」
「…何が、かな?」
「っ、だから名前っちっスよ!名前っち記憶ないって…」
黄瀬は、赤司のオッドアイで見つめられ言葉を止める。
「…きつくないって言ったら嘘になるが、もうそんなことどうでもいいんだよ。姫様がまた僕らの…僕の目の前に現れてくれたんだから」
「赤司っち…」
「1000年以上も待ったんだ。もう、離す気も離される気もないよ」
「…そうっスか」
黄瀬の手が無意識に握られる。
「僕らは、必ずしも姫様に愛情を抱いている、それがどんな情でもね」
「そうかも、っスね」
「だろう?もう姫様から離れられない身体になってるんだよ」
すると、どこから名前の「ご飯食べよー」という声が聞こえた。
「――ああ、姫様が呼んでいるからこの話は終わりにしよう、涼太」
「そうっスね…」
赤司の言葉に苦笑いを浮かべた涼太は、一緒に屋敷の中へと入って行った。