『いいかい?名前。憶えておくんだ』
『なあに?』
“彼”は、唇を弧を描き言った。
『言葉は呪いだ。だから、気をつけて。―言葉の呪いに殺されないように』
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「黒石真断」
涙が止まらない。
ああ、なんて懐かしい。
「テツヤ、やめろ!!正気に戻れ!!!」
征十郎がテツヤを止めに行く。
だけど、テツヤの圧倒的な力に飲み込まれてしまいそうだった。
「…赤司、くん」
「テツヤ、姫様はまだ戻ってきたばっかりだ。いなくなったりなんかしない。繋がりを深くしようとするな。戻れなくなるぞ」
「――赤司、くん」
テツヤがいつものテツヤに戻っていく。
「…もう、いっそのこと戻れなくなったほうが良かったのに」
ポツリとテツヤが呟いた。
……テツヤが今までにないくらいの取り乱しようで早く記憶を思い出したくなった。
「……戻れなくさせたのは、私なんだ」
「名前ちん?」
「うんん、なんでもない」
私をずっと抱きしめていた敦。
ぼりぼりとお菓子を食べている。
「…やっぱり、俺、黒ちんのこと嫌いだわ」
「どうして」
「…だって、この中で名前ちんと一番繋がりが深いのが黒ちんなんだもん」
「…、」
敦の言葉に何故か答えられなくなってしまった。
「征十郎は?」
「確かに名前ちんと赤ちんの繋がりも深いよー。だけど、黒ちんのほうが深いし、強いんだよ」
「っ、なんで?」
「―なんでって、そりゃあ、血の繋がりに決まってんじゃん」
何かが崩れた音がした。