人の命を取る

「人を殺してきたって…」


「うん?どうしたの?名前ちん」


首をかしげる敦。
かわいいけど、発言が恐ろしい。


「…、人殺しは、だめでしょう!?」


「なんで?邪魔な人を取り除いただけだよ?」


「取り除くとか…!!」


「…当たり前のことをしただけだよ?ねー赤ちん」


征十郎を見る。
彼は、腕を着物に隠して腕を組んでいた。


「そうだね。敦はよくやってくれたよ」


「征十郎まで!?」


「……姫様もこのことについては、黙認してたよ?」


「!!!」


私が、この事実を黙認していたの?
この簡単に人を殺すようなことを。


「…しょうがないんですよ、名前」


「テツヤ…?」


「僕たちは常に敵から狙われています。この能力が欲しいのでしょう。だから、殺される前に殺すんです」


「っ…」


テツヤの目が冷たい。
声も冷たかった。


「特に狙われているのは、名前です」


「え、私!?」


「はい。貴女は、松奏院家でも“特別”な存在でもあります。欲しくなるのも当然でしょう…」


テツヤが私の頬に手をあてる。
するりと撫でられた。


「……夢で、征十郎との出逢いを見たんだけど、あの時の山での出来事…」


私が見た夢を話すと、征十郎の肩がびくりと動いた。


「あの、周りに転がった死体……あれ、私の能力なの?…というか、アレは記憶なの?」


「…姫様っ、」


征十郎が焦ったような声で呟いた。

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