いつか、君にとって自分がかけがえのない存在だったらいい。
いつか、君にとって自分がほかの誰よりも頼りがいのある存在だったらいい。
そんなこと、願っても意味なんかないだろうが。
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「…っ!テツヤ、大丈夫!?」
私は、涼太から離れテツヤへと近寄る。
テツヤは、力無く地面へと座り込んだ。
「……名前っ」
ぎゅう
絞り出したような声で私を抱きしめるテツヤ。
「よかった。あなただけは、渡さない。例え何があろうとも名前だけは絶対に…っ」
力強く抱きしめてくるテツヤ。
征十郎も涼太も何も言わない。
「名前さえいればいいんです。僕らには名前さえいてくれれば」
「…っ、テツヤ」
彼らの、私に対する執着はすごいと感じる。
特に、テツヤと征十郎の私への執着はすごい。
「赤ちーん」
ふと、建物の方から敦のほわーんとした声が聞こえた。
「敦か。おかえり」
「ただいまー」
「あれ?今回は大輝と真太郎も一緒だったはずだけど、二人は?」
「んー?峰ちんが道草してるらしくて、みどちんが見張ってるー」
…話を聞いてると3人は征十郎の命令でどこかに行ってたらしい。
「名前ちーん、褒めて褒めてー」
とたたたと擦り寄ってくる敦に後ろから抱きつかれた。
前はテツヤで後ろは敦。
二人ともぎゅうぎゅう抱きついてくる。
「…敦たちは何してきたの?」
「んー?掃除ー」
「掃除?何の?」
「いらない人を掃除してきたのー」
私は、敦の言葉に驚いた。
「人…?」
「うん、殺してきたの」
平然と言う敦に恐怖を覚えた。