ここにいてください

あの一瞬、浮かんだ光景はなんだったんだろうか。



「……姫様」


「あ、赤司さん?」


この気まずい雰囲気に赤司さんが口を開いた。


「赤司さんなんて呼ぶな。俺ら全員のこと名前で呼んでいたし、敬語は要らないから」


「はい…あ、うん」


「そして、君にはこの松奏院家に住んでもらうよ」


「…え!?私、橘の家に帰りたいんですけど」


私がそう口に出すとみんなの顔が歪む。


「だめだよ、君は正式な松奏院家の後継者……いや、初代の娘の名前様の生まれ変わりだからね」


「…そんな、こと…」


「君には覚えがあるだろう?」


「…っ」


征十郎の言っている通りだった。
彼らをどこか懐かしいと感じることがあった。


「いいよ。今はまだ記憶がなくても」


「え?」


「ここにいて思い出してくれればいいから」


「…ここいて?」


「そうですよ」


そこで、テツヤが入ってきた。
テツヤは、部屋の隅のほうで正座をしている。
傍らには、黒の日本刀が置いてある。


「貴女はここにいてくれさえすればいいんです。僕らの隣にいてくださればいいんですよ」


「…まあ、テツの言うとおりだな」


「そうなのだよ」


「黒ちんの言葉に同意ー」


「そうっスね!」


テツヤの言葉にみんな同意していく。
だけど…


「ここの帝光村は、この松奏院家が全てだから」


そうだ。
ここの村は松奏院家が権力を牛耳ってる。


「だから、ここにいてください。名前」


その言葉に思わずうなずいてしまいそうだった。


[*prev] [top] [next#]