未来を奪う

※大学生設定・微狂愛



僕には中学からずっと好きな人がいる。
この思いは、大学生になった今でも消え褪せていない。
その彼女とは、高校は別になったが今この大学で運命の再開をした。


「名前さん」


目の前にいる肩ほどまでの黒い髪。
大学生になっても染めていない黒髪は、中学の頃と同じだ。
でも、顔は大人っぽくなり綺麗になった。
ナチュラルメイクが彼女らしいと思う。


「あれ、黒子くん。次は講義?」


「はい。名前さんは違うのですか?」


「うん。次は教授が出張でいないから急遽講義がなくなったの」


名前さんは、綺麗に笑う。
その笑みに僕の心臓が強く高鳴ったのが分かった。


「じゃあ、行くね」


そう言って名前さんは、僕に背を向け歩き出す。
名残惜しくて、僕は髪に触れようと手を伸ばすもそれは届かない。
そうだ。
中学から彼女には届かない。
僕がどれだけ名前さんのことを思っても、名前さんには届いてなくて。


「名前、さん…」


ほら、彼女の名前を呼ぶだけでこんなにも心が高鳴る。
本当にどうしてくれよう。
こんなにも僕は彼女のことを愛しているのだから、きっと彼女も僕のことを愛してくれているはず。
いや、絶対そうだ。
僕の名前さんに向ける熱い視線も気づいてるはず。


「だったら、もういっそのことあなたを奪いましょうか」


そうすればいい。
そうすれば、僕も名前さんも喜ぶ。
だって、僕のものになるのだ。
喜ぶ以外ないだろう。


「ふふ、そうですね。名前さん、待っててください。今行きますよ」


僕は、次が講義だというのに名前さんの黒髪を追いかけた。


‐‐‐‐‐‐


なのに。
せっかく君を奪おうと思ったのに。


「黒子くん、ごめんなさい。私、好きな人がいるの」


誰もいないある一つの講義室。
彼女のその言葉に僕は、虚無感だけが広がる。
ああ、そうか。
彼女には僕じゃだめなのか。
そう、頭では分かっていても心はついていかない。


「…そう、ですか。では…」


「っ、え」


ああ、名前さんの驚いた表情も素敵です。
でも、なんでそんなに驚いてるのですか…?


「…黒子、くん?何、してるの?」


「なんだと思いますか…?」


そんな、恐怖の目で僕を見ないで下さい。


「やめてよ!黒子くん!!」


彼女は僕の手によって身体を縛られている。
もう、これで逃げられない。


「…僕、講義があるので待っていてください。それが終わったら迎えに来ますから」


「は、ずしてよっ!なんでこんなことっ!!」


「なんでって…あなたのせいですよ。僕を振るから…こんなに僕はあなたのことを思っていたのに、あなたは僕のことを思っていない。そんなことありえないんです。だから、こうやって無理やりでも奪おうかと思いまして」


名前さんが絶望した表情をする。
ああ、なんかそんな表情をされると征服欲が満たされますね。


「ひどいっ!」


「ひどくて結構ですよ。もう、僕は決めましたから」


僕は、名前さんと目線をあわせるようにしゃがむ。
あなたの黒髪ももう僕のものなんですね。


「あなたの未来を奪います」


ずっとずっと僕から離しませんから。


‐‐‐‐‐‐
宇宙飛行士様に提出。