このまま僕を保存して

※義理の兄妹設定


僕には目に入れても痛くないくらい溺愛している妹がいる。
僕が10歳、妹が9歳のときに親が再婚して義理の兄妹に。
最初は僕の後ろをいつまでもついてくるほど煩わしかった妹が、今ではこれでもかってほど溺愛している。


「征十郎兄さん」


「なんだい?名前」


ああ、名前の口から発せられた僕の名前。
それだけで、心が高鳴る。


「私ね、好きな人が出来たの!」


「――は?」


「征十郎兄さんのお友達の緑間さん…」


名前の言葉に僕は動揺を隠しきれない。
好きな人が出来た?
しかも真太郎?
どこで出会ったんだ!
出会う機会なんてないはずだぞ!?
その前に真太郎は、殺そうか。


「…名前、どこで出会ったんだい?」


ここは京都。
そして真太郎は東京。
出会えるはずがないのに。


「うふふ、内緒です」


頬をほんのりと赤く染めた名前。
かわいい。
かわいいよ名前。
だけど、僕の質問に答えてないよ。


「……真太郎は、だめだよ」


「どうしてですか?」


「彼は、変な人だし、そもそも名前にあわない」


名前には、そう、僕みたいな完璧な人でなければならない。
頭脳も見た目も僕以上のやつじゃなきゃだめなんだ。


「…緑間さんは私なんかに合わないのはわかってます」


「!いや!違うんだ!名前は、十分だ。十分かわいいよ」


名前は、自分が真太郎に合わないと勘違いしたらしくかわいらしい名前の眉が垂れ下がっている。


「…ありがとう、兄さん。でも応援してくれないのでしょう?」


応援、か。
そんなのするはずがない。
名前は、僕の唯一の妹であり、最愛の人だ。
そんな名前を真太郎なんかに渡すはずがない。


「…征十郎兄さん?」


僕は、優しい手つきで名前の頬を撫でる。
さらりとした滑らかさで。
その頬に口付けたいと思った。
名前の全ては僕のものだ。


「ねえ、名前。僕がもし…―もし、僕が名前のことを愛してると言ったらどうする?」


「……え?」


目を見開く名前。


「もしも、の話だよ」


「あっ、そうですね。もし、私のことを愛してるとおっしゃるなら、それは嬉しいです」


「…嬉しい?」


「はい。私はずっと幼い頃から征十郎兄さんに憧れてきましたから――っきゃ!」


僕はそれを聞いた瞬間、名前を抱きしめた。
ああ、もう名前が愛しすぎて困る。


「せ、征十郎兄さん?」


「…名前」


ぎゅうっと力強く抱きしめると、名前は恐る恐る両手を僕の背中に回す。


「…どうしたんですか?」


「なんでもないよ。なんでもない。だから、もう少しだけ抱きしめさせて」


もう少しだけ僕の腕の中にいるということを実感させて。
どれほど、名前の言葉が嬉しかったか。
どれだけ、僕が名前のことを愛しているか。
ねえ、まだ知らなくてもいいから。


「…変な兄さん」


少し笑いながら言う名前は未だ僕の腕の中。
もう、愛しさがこみ上げてきてどうしようもないよ。
名前も大変だね。
義理の兄の僕なんかに捕まって。


「名前、大好きだよ」


「私も大好きですよ」


大好き大好き、愛してる。
君に僕のありったけの愛をあげる。


「…名前、もう少しだけ」


もう少しだけ名前の兄でいさせて。
今すぐに彼氏にして欲しいけど、だけど今はまだいいや。


「うふふ、いつまででもいいですよ」


ああ、名前、大好き。
僕の深い深い愛を受け取ってもらえるまで、兄のままで。




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愛人様に提出。
友情出演で緑間くんが登場。


(深愛:ふかく愛する)