やさしくない世界の中で (1/3)


監視とまでは言わないが放課後まで様子を伺っていたが特に気になるところは、なかった。

むしろ、直視するのが嫌で軽く避けていた感じだ。

で、結局はこうなるんじゃが。

放課後の教室で未だに席に座ったままの女に柳生とジャッカルが近付く。

それを俺は、後ろで見ている。

簡単に言うと見張り。



「私達が何しに来たかわかりますね?」

「なんとなく?」

「なら話は、早いです。では、殺させていただきますね」

「おいおい…学校では、不味いだろ。それに…」

「桑原くんは、手を出さなくていいですよ。私が殺りますので」



柳生が眼鏡のブリッジを指で押さえながらゆっくりと迫るが女は、椅子から立つ様子はない。

ジャッカルは、何か言いたそうにしているが柳生の殺気に何も言えずその場に立ち尽くしている。

おー怖い怖い。

そして女の目の前に立つと懐から小刀を取り出すとそれを突き付ける。



「抵抗しないのですか?」

「………………」

「まぁ、いいでしょう。教室を派手に汚すわけにはいかないので一発で済まさせてもらいますよ」



全く動く気配のない女に柳生が容赦なく小刀を降り下ろし、ジャッカルが目を反らす。もちろん、俺も。

肉が切れる嫌な音がした後、教室に広がる鉄臭い匂い。そして微かに聞こえる水音。

全てが彼女の死を物語っていた。

しかしゆっくりと目を開くとそこには、信じられない光景が広がっていた。



「…っ!?な、なぜ…」

「…………」

「なっ、死んでないだと?」



そこには、柳生の一太刀を首に受けながらも首が跳ねられる事はなく、彼女は柳生の腕を掴んでいた。

普通の人間なら死んでいるであろう怪我を負っているに生きているところを見ると、彼女が悪魔なのは明らかじゃ。

しかしあのエクソシストである柳生の一太刀を食らって苦しまないのは、おかしい。



エクソシストとは、悪魔を払うというか滅すると言うか…まぁ言い方を悪くすると悪魔専門の殺し屋ってところだ。

つまり人間に害を及ぼす悪魔から人間を守るのが彼等の役目だ。

そして悪魔は、エクソシストの血筋の者にしか殺せない。と言うか、エクソシストの攻撃全てが毒と言っていい。

だからこそ、エクソシストである柳生の一太刀を受けても苦しまない彼女は、異常なのだ。


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