苦悩する者達 (1/4)


そして跡部の別荘に着いた俺達は、ゆっくりと悠凪を移動させた。さすがにダメージが大きかったのか全く目を覚ます様子がない悠凪に赤也が心配そうな顔をしていると跡部が、なんか嫌な気配でも感じねぇ限り回復に専念してるんだから起きねぇよと言うと適当に座ってろと部屋の奥へ行ってしまった。



「赤也、そんな心配しなくても大丈夫だよ」

「…ウィッス。でも悠凪先輩なら回復にこんな時間掛からないと思うんスよ…」

「…仁王、どうなの?」

「確かに、魔力はかなり消耗しとる。ギリギリで肉体を保っとったみたいじゃな…」

「…変だね」

「…なにがッスか?」



しかし、幸村は赤也の問いに答える事はせず、なにかを考えるように黙ってしまった。

と言うのも、赤也がいるから詳しくは話せないだけなんじゃが…。

俺や幸村が見た悠凪のヒストリーログの中で拷問をされ続けていた悠凪は、常に回復と再生をしていたがこんなに衰弱している場面はなかった。



「もしかしたら、悠凪は吸血鬼の力が弱くなってるのかもしれない」

「…可能性は、高いの。こやつ、吸血鬼としても悪魔としても、まともに食事しとらんからの」

「食事って…血とか魂の事ッスよね?ずっと食事しないとどうなるんスか?」

「…赤也は、ご飯食べないでいるとどうなる?」

「…え、お腹空くッス」

「じゃあ、更にそのままご飯食べないとどうなる?」



幸村の言葉に赤也は、暫く考える様な素振りを見せる。そしてやっと理解したのかハッとした顔をして幸村を見るとゆっくりと幸村が頷いた。

つまり、悠凪は餓死とまではいかないが…それに近い状態って事じゃ。

しかも今回ので殆んどの魔力を消耗したみたいで、悠凪から覇気が感じられん。

人外は、魔力が命と言っても過言ではない。魔力があれば、ある程度はどうにでもなるからの。



「な、なら俺の血をあげれば!」

「それは、悠凪が断るじゃろ。理由はわからんが、悠凪はわざと食事を避けとるみたいじゃし」

「しかも俺等に気を遣ってる訳でも無さそうなんだよね。ヒストリーログの中でも食事はしてなかったし」

「…で、でもそれじゃあ悠凪先輩が死んじゃうじゃないッスか!!」

「最悪、無理矢理にでも食事させるから大丈夫だよ」



そう言いながらニコリと笑う幸村に赤也が顔を青くさせとるが、確かに無理矢理にでも食事させんと悠凪は、自分では絶対せんじゃろうから仕方なか。

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