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悠凪の元へ着くとちょうど、床に寝かせられたところだった。



「…出来る奴は、手伝え。全部抜くぞ」

「ほな、やるで…いつまでもこのままにしとく訳にもいかんやろ」

「…では、私も手伝いましょう」

「悠凪先輩ッ…」



そして跡部と忍足、柳生が床に寝かせられた悠凪に近寄ると、身体中に刺さっているナイフ等をゆっくりと抜いていく。

それを見ている者もいれば、見ていられないと顔を背ける者や泣いている奴さえいた。

そして羽根に刺さっていた物を全て抜き終わると同時にシュルシュルと羽根は消えた。


そして華奢な身体に何十本と刺さっている刃物を順番に抜いていくが、その度に溢れる血が更に跡部達を躊躇させた。



「チッ…さすがに血がやべぇな。仁王、お前治癒出来ねぇのか」

「すまん…悪魔なら多少は意味があるかも知れんが…吸血鬼となると効果があるとは思えん。じゃが、ダメ元でやってみるぜよ」

「…こればっかりは、エクソシストや死神にも出来ないからね」



跡部の言う通り、悠凪の流した血の量は計り知れない。しかも、悠凪の意識がないせいなのかまるで再生しない。

首に柳生の一太刀を食らった時は、すぐに傷を塞いでいたが…今は目を反らしたくなるくらい身体中に風穴が空いている。

そんな事を考えながら自分が扱える治癒魔術を悠凪に使うがやはり、特に変化はなかった。

そしてなにも変化がないとわかったのか、赤也が急に悠凪に刺さっていたナイフを拾うと自分の左腕を切った。



「赤也、お前なにしてんだよ!?」

「俺の血をあげれば少しはよくなるかも知れないじゃないッスか!俺だって…悠凪先輩と同じ吸血鬼ッス!」



そう言いながら左腕から滴る血を悠凪の口へと持っていきながら、必死に悠凪の名を呼ぶ赤也に誰も声を掛けられなかった。

氷帝の連中からしたら、赤也が吸血鬼だと言うことの方が衝撃だったのか目を見開いている。ちなみに跡部には、幸村が赤也と悠凪が襲われた時に赤也が吸血鬼な事を簡単に説明をしていた。

そして泣きじゃくりながら悠凪の名を呼び続けていた赤也が急に静かになり、不思議に思いそちらに視線を移すと悠凪がうっすらと目を開けていた。

と言っても、左目は潰すされた様で固く閉ざされているので正確には右目だけ開けていた。


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