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ゆっくりと悠凪が顔を上げた瞬間にその場の空気が一気に変わった。
ビリビリとした圧力に悠凪以外の者は、動きを止めた。そして今、少しでも動いたら殺される…そんな感覚に襲われていた。
禍々しい程の威圧感発する悠凪は、ゆっくりと跡部と交戦していた悪魔を冷めた目で見つめると指差した。
「
帰って?今なら見逃す。じゃないと…消しちゃうよ?」
その瞬間に仁王と幸村の元にいた悪魔が悲鳴をあげたかと思ったら頭を抱えてのたうち回る。
酷く悠凪の目は冷めていてまだわからない?といった様子で頭を傾げると、今度は日吉達と交戦していた悪魔が頭を抱えて苦しみだす。
悠凪は、怒っていた。
仁王を悪魔のくせにと言った事に…幸村を必死に守る仁王に悪魔のくせに人間を守ってんじゃねぇ!と言った事に対して。
悪魔だから人間を守っちゃダメなの?人間だから悪魔を守っちゃダメなの?
そんな疑問がぐるぐると悠凪を支配していた。そして立海と過ごした日々の中で触れ合った人間を思い出す。
なかま…仲間…おなじ…同じ
いっしょ…一緒。
あたしの事をこわくないって大丈夫だよっていつもいってくれた雅治や精市…赤也…みんなあたしの大切なひと。
「
あたしの大切なひと傷付けたら…ゆるさない」
「ひ、姫様?なにをそんなに怒る必要が?たかが人間でしょう?ましてや、エクソシスト…」
「
うるさい…よ?」
「ぐっ…気に触ったのならば、謝りますのでどうか落ち着いてくださいっ…!」
しかしそんな言葉は、悠凪には届いていない様でゆっくりと仁王と幸村の方を向いたかと思うと未だに頭を抱えてのたうち回っている悪魔を引き寄せると目の前の悪魔に渡すように押し付けた。
そしてそれを持って早く帰れと言わんばかりの悠凪は、帰らないのなら…とブツブツと呪文を唱え始める。
「
あーあ、何やってんだか。そうなったクレフィスはどうにもならない。退け…」
「チッ…姫様、ではここは退かせていただきましょう」
「ふんっ…また来ますので覚えていなさい、そこのエクソシスト」
その言葉に悠凪が呪文を唱えるのをやめる。
そしてゆっくりと前を向くと悠凪に向かって頭を下げると他の悪魔と共にその場を去って行った。
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