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今にも折れそうな細い腕を引いて連れてきたのは、俺のサボり場でもある屋上。
ゆっくりと腕を離して紅に向き直ると、キョトンとした顔をして頭を傾げていた。
「お前さんの目的は、なんなんじゃ?」
「…目的?あたしの?」
「そうじゃ」
「ん…よくわからない?」
「バカにしとるんか?」
なにが?と言った様子でまた頭を傾げる目の前の紅にイライラしてきた。
しかし紅に敵意はなく、なにを考えているのかキョロキョロと周りを見渡している。
そしてジィッと俺を見上げる女にたじろく。このまま見ていたら魅いってしまうそうでパッと目を反らした。
「…怖い?」
「…は?」
「あたしの事」
「なんでそんな事を聞くんじゃ」
「あたしが悪魔?だから?」
何かがおかしい。
こやつは、何かが変だ。
違和感がありすぎる。
仮に目的がないとしても悪魔は、必要以上に人間と触れ合おうとはしない。それにエクソシストに見付かる確率だって高い。
なのにこいつは、魔隠もしないで人間が溢れかえる学校に来とる。しかも昨日なんて柳生に殺され掛けたのにも関わらずじゃ。
……何を考えているのかが全くわからん。
「魔隠は、どうしたんじゃ?お前さんはここに死にに来とるんか?」
「…魔隠?なに、それ?」
「ふざけとるんか」
「あたし何も知らないの」
「知らないってどういう意味ぜよ」
「あたしずっと火の中?にいたの」
悪魔なら誰でも知っている魔隠を知らないと言った。
悪魔にとって魔隠はエクソシストから逃れる為の唯一の物だ。それを知らない悪魔が本当にいるんじゃろうか。
それに火の中にってどういう事じゃ。わけがわからんぜよ。
「吸血鬼って不死身?なんだよ」
「それがなんじゃ」
「だから1週間火の中に入れられたの。熱かった、苦しかった…だから逃げた」
「……………」
「でもエクソシスト?に追い掛けられた。捕まって火の中に入れられて逃げての繰り返し?」
「……………」
「でね?勉強?すれば逃げられるって思ったの。だからここに来たの」
だから目的は、勉強?と頭を傾げながら俺を見上げる。
つまり、エクソシストに玩ばれて逃げ出して来たって事か?いや、エクソシストがホントにそんな事をするんか?
そして不思議そうに俺の顔を見上げている紅が嘘をついてない様に思えたのは、俺が半分悪魔だからなんじゃろうか。
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