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バッと身を翻して投げ捨てられた赤也の元へ向かおうとするがそれを許さないと言わんばかりに俺に攻撃を仕掛けてくる悪魔に反応し切れずに攻撃を受けてしまった。
…チラリと赤也の方を見れば、仁王が必死に治癒魔術でどうにかしようとしているのが見えた。
「愚かな、弱者は捨てるもの。生き残るのは強者のみです。生温い世界を生きてきた貴様等にはわからないでしょうが…っ!」
攻撃を受けた左肩を押さえながら必死に印を結びながら対抗していたら、突然何かが爆発した様な爆音と共に目の前が真っ白になった。
そしてゆっくりと目を開けると俺と悪魔の間に闇色の大きな球体があった。
それを見た瞬間ザワリとした感覚が襲い、咄嗟に逃げようとしたが体が上手く動かない。
その瞬間、闇色の球体がぐにゃりと歪みバサァッと見覚えのある黒い羽が舞った。
「………………」
「っ…ひ、姫さっ…!ぐはっ…」
「…
ゆる…さ、ない」
目の前に現れたのは今までに見た事のない姿をした悠凪だった。全身闇色のドレスに身を包んだ悠凪が軽く腕を振るとさっきまで俺に向かって来ていた悪魔達が壁にめり込んだ。
前に見た悠凪とは比べ物にならない程の殺気に心臓を鷲掴みされている様な気がして生きた感じがしない。
…冷や汗が止まらない。
それはこの場にいたエクソシストや悪魔にも同じようで唯一この空気の中、余裕の笑みを浮かべているのはルシファーだけだった。
「…せい、いち?ごめんね」
「……悠凪?」
「うん、あたし…終わらせるから」
そんな凍り付いた空気の中、鈴のような悠凪の声が響く。ゆっくりと振り返った悠凪は、俺を見るなり悲しそうに笑うと俺の手を取り赤也と仁王の元へと移動した。
仁王がビクリと反応するが悠凪は、グッタリとしたまま動かない赤也を抱き抱えると赤也の頬を優しく撫でた。
そしてブツブツと何かの呪文を唱えながら悠凪が赤也の腹部に軽く触れるとジュワジュワと聞き慣れない音と共に赤也の腹部が綺麗になった。
「…あかや、起きて」
「ッ…、悠凪せん、ぱい?」
「うん、赤也…約束破っちゃったんだね」
「…す、すんません…でも怖くなかったッス」
「ごめんね…赤也、精市と雅治守れる?」
「大分、馴染んで来たんで…多分大丈夫ッス…」
「ん、赤也…おいで」
何がなんだかな俺と仁王をよそに赤也がゆっくりと起き上がり悠凪に抱き付くと赤也が悠凪の首に噛み付いた。
そしてそれを見ていたルシファーが闇色の球体を放って来たが、背を向けたままの悠凪がそれを片手で防ぐ。
それを合図にずっと動けずにいたエクソシストと悪魔達が動き出す。
エクソシストが悠凪に向かって一斉に攻撃をするがそれを全て羽で防ぐ。
その間、ずっと赤也は悠凪に噛み付いたままだった。
「…悠凪せんぱい、多分もうイケるッス…」
「ん、あかや…大丈夫だよ。おいで」
「…っ!幸村部長…仁王先輩…俺が守るんで、安心して下さい」
「赤也…お前っ…!それっ…どういう事じゃ…」
「…悠凪せんぱいと同じ、吸血鬼ッス」
ゆっくりと振り返った赤也の背中には悠凪と同じ翼が生えていて、瞳は赤くなっていた。
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