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割れた窓ガラスを見つめて立ち尽くしている俺にジャッカルが大丈夫かと心配そうに肩を揺する。
「…おぉ、大丈夫じゃ」
「お前、仮にも半分悪魔だろうが!逃げるとかしろよ!」
「いや、俺が戦闘タイプじゃないの知っとるじゃろ。それに悪魔の攻撃じゃそうそう死なん」
「だからって、あぁ…もう!とにかく、無事でよかったぜ」
「とりあえず、血の処理は終わりましたが…窓ガラスはどうにもなりませんね」
エクソシスト御用達の謎の水吹きで先程まであった血溜まりが綺麗さっぱりなくなっている。
悪魔などの血を浄化する物らしいが…聖水とは、また違うらしい。
そして無言で近付いてきた柳生に顔に水吹きを掛けられる。そして頬からシューッと音がした。多分、頬に血が付いていたんじゃろうが…
いくら血にしか反応しないからって悪魔の俺に掛けるのはどうなんじゃ?
ちなみに俺は、一応悪魔だが人間との混血児の上に下級悪魔だからエクソシストの対象ではないらしい。
もちろん、魔術で人間を殺したりしたら裁かれるけど。
「ふぅ…逃がしてしまいましたよ」
「つーか、吸血鬼ってまだいたのかよ。絶滅したって話じゃなかったか?」
「あの種族は特殊ですからね。それに不死身なのに絶滅っていうのはおかしな話ですし。隠れていたんでしょう」
「でも悪魔としては、上級だろ…あいつ。つーか、何しに来たんだよ」
「目的が丸井くんの可能性もありますし、違う目的かもしれません」
そう言いながらそそくさと教室から出て行く柳生に俺とジャッカルも後を付いていく。
正確に言うと窓ガラスが割れた音で誰かが来る前に逃げてるだけなんじゃがの。
それにしても…あやつのあの時の顔と行動。
本当にただの悪魔なんか?
「でもあいつ殺気とかなかったよな?つーか、ほぼ無抵抗だったよな…」
「それにあやつ、魔隠の術もなんも使ってなかったぜよ」
「えぇ、確かに隠す気ゼロでしたね。しかしもう学校には、来ないでしょう」
「まぁ、エクソシストが二人いるしのう。普通なら逃げるぜよ」
「仕方ありませんね。見付けてしまった以上は、始末しなければなりません。目的があるならば何処かに潜んでいるでしょうし」
あぁ、柳生の正義感に火が着いたようじゃ。俺からしたら逃げたなら放っておけばいいのにって思うが…
まぁ、俺も半分悪魔じゃからのう。なんも言えんが。
(お前等、遅いよ)
(悪いのう。柳生がはっちゃけての)
(なに?ちゃんと仕留めたの?)
(いや、逃がしてしまいました)
(ふーん?柳生にしては珍しいね)
(ちと、特殊な奴でな)
(吸血鬼との混血種らしいぜ)
(へぇ…それはまた珍しいね)
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