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あぁ、俺は無力だな。
俺の腕の中で目を細めながら嬉しそうに笑っている悠凪を俺はどうやって守ってやればいいのかわからない。
エクソシストにもルシファーにも悠凪は、渡さない。でも相手は、手段を選ばない連中だ。
だからこそ悠凪は、俺等を心配して離れようと…ここからいなくなろうとした。事実、赤也は悠凪目当ての輩に襲われた訳だし…またそういった事が起こらないとは限らない。
だから、俺のワガママでみんなを危険な目に遭わせるかも知れない。もちろん、みんなを危険な目に遭わせたい訳じゃない…でも悠凪をこのまま一人にするのも嫌だ。
それは仁王も赤也も言っていたけど…やっぱり俺は、悠凪と種族が違うからなのかな…凄く不安だ。
「ふふ、いっその事…俺と一緒に逃げようか」
「…ん?」
「きっと悠凪は、俺がいいならいいよ…なんて言うんだろうね」
「…精市?どうしたの?」
「ふふ、なんでもないよ。明日は、久し振りに学校に行ってみようか」
「…ん、大丈夫なの?」
「うん、家にいるよりは安全だと思うから」
いくら、結界や人払いをしてもさすがに学校みたいなところにわざわざ出向く訳がない。まぁ、エクソシストの連中が悠凪が立海にいるのを知ってる場合は上に重圧掛けて強行突破とかはありそうだけど。
エクソシストの連中ならまだ対応は、いくらでも出来るし。なんせ権力でバカみたいに数だけ動かせるだけだし、何よりエクソシストの上層部は頭が悪いヤツばっかりだからね。
問題は、ルシファー側だ。
ルシファー本人が来る事は、ほぼほぼないとしても…ルシファー直属の上級悪魔となるとそれなりに強力な悪魔ばかりだからね。
「だから、お弁当は2つね?」
「おべんとう?」
「ふふ、悠凪の分も作るんだよ?」
「ぷりんじゃだめ?」
「ふふふ、ダメ。みんなで一緒に食べるんだから」
「みんな…ん、わかった。2つ、つくる」
ここ5日間でやっぱり悠凪にとって食事は、吸血なんだと染々と実感した。どんなに俺等と同じ食べ物を食べても魔力は回復しないし、寝れば体力は回復するけど雀の涙くらいだ。
赤也や仁王がいなかったらまだ悠凪は魔力も体力も殆んど回復してない状態だっただろう。
それに赤也が毎度注射針を怖がるからって理由で途中から嫌々だけど悠凪に吸血して貰ってたんだけど、やっぱり吸血鬼なんだなぁって実感した。
「…精市?ねる?」
「ふふふ、悠凪はいい子だね」
「精市がねむそう…だから?」
「ふふ、じゃあもう寝ようか」
「ん、ねる」
ゆっくりと俺から離れるとトコトコとベランダに出る悠凪の背中を見つめる。
毎晩、悠凪は寝る前にああやって月に向かってお祈りをしている。理由は、なんとなくわかるから聞かないけど…やっぱり悠凪は優しい子だと思う。
未だに自分が守れなかった血族を想って、あんな悲しそうに空を見上げる悠凪は今にも闇に消えそうなくらい儚く見えた。
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