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柳生は、戸惑いながら掴まれた腕を振り払うと彼女から距離を取った。
それを確認したのか今で椅子に座っていた女がゆっくりと立ち上がり顔を上げた。
その瞬間、空気が変わった。
真っ黒だった彼女の瞳が真っ赤に染まっていたのだ。
そしてゆっくりと自分の首元を触ったかと思うとシューッと謎の音をたてたかと思うと傷口が塞がっていた。
いくら悪魔に再生力があってもエクソシストにやられた傷を治すのにはそれなりに時間が掛かる。
なのにこの女は、一瞬でそれをやって見せた。
「なんで?って顔してるね?」
「…っ…上級悪魔かっ!」
「うん?どうだろう。でもあたしもそこの子と同じだよ」
「俺と同じじゃと?」
「うん?吸血鬼だけど悪魔って言ったらわかってくれる?」
全く目で追えなかった。
ニコリと笑ったと思ったら目の前に女がいた。
ドクンッドクンッと心臓がうるさいのは、この目の前にいる女俺の頬に触れているからだ。
血塗れの手で仲間だね。と言うように優しく頬を撫でる女は、とても悲しそうな顔をしていた。
「仁王くんっ!離れて!」
「…………っ!や、やだなぁ…そんな物まで持ってるの…?」
「仁王!そいつから離れろっ!」
「あぁ…そう。キミ…」
「お、お前さん…」
柳生が投げ付けたのは、悪魔が嫌う液体が入ったビン。ゲームとかでいう聖水みたいなものだ。
柳生は、俺に離れてと言ったが俺は動けなかった。つまり、俺もその聖水を浴びてしまうはずだった。
だが、それを目の前の女が全て受け止める様にして俺を突き飛ばしたのだ。
「………っ…」
「さすがに混血種でも悪魔は、悪魔ですね。それに吸血鬼ならば痛みは2倍ですから」
「…そ、そうだね?」
「仁王くんから離れなさい。彼は、貴女とは違うのですよ」
「仁王っ!こっちこい!」
聖水が余程効いたのかふらつきながらゆっくりと柳生の方を向くとバサァッと背中から漆黒の羽根が生える。
本当に上級悪魔だったんか。
そんな固まったままの俺を守る様にジャッカルが俺の前に立つ。なんで、俺が守られとるんじゃ?
そう思いながらも体は、言うことを聞かずただ俺は、立ち尽くしていた。
そして窓ガラスを突き破り逃げ出す女に柳生が札を投げるが届くことはなく、ヒラヒラと札と共に黒い羽が空を舞った。
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