それは優しい刃 (1/5)
跡部くんに案内されたバスケコートは、それはもう本格的だった。
野外コートなのでナイターで照らされているコートには、新品のボールが多数用意されていた。
すぐにボールに駆け寄り拾い上げる。久し振りに触れたバスケットボールになんだか泣きそうになる。
体育でもバスケは一度も選択しなかったから…何年振りになるんだろう。
…凄く懐かしい。
「お前さんバスケ上手かったんじゃろ?シュート見せてくれんか?」
「に、仁王…」
誰もが悲しそうな顔でボールを大切そうに抱き締めている璃亜に声を掛けれずにいた。
しかし仁王は、違った。
ただ璃亜を見つめていた幸村や跡部を通り過ぎてスタスタと璃亜の元へ向かうと無数に転がるボールを拾い上げると璃亜の頭に手を置いたのだ。
「いいよ」
「ずっとやってなかったんじゃろ?腕が落ちてなければいいの〜」
「う、うるさい!絶対入るし!」
「ほぅ?それは楽しみじゃな」
ほら、撃ってみんしゃいとゆっくり仁王が璃亜から離れると璃亜が深呼吸をする。
そして目を閉じ暫くボールを弾ませるとゆっくりと目を開き、構えてボールを放った。
そのフォームは、ブランクなど感じさせない程に綺麗でそのフォームで放たれたボールは、綺麗な放物線を描きスパンッとゴールに吸い込まれた。
「は、入った!やったー!ねぇ、見た?入ったよ!!」
「お、おぉ…」
「もう1回やっていい?また見ててね?また入れるから!」
「…………」
無邪気な笑顔と言うべきなのかそれは、もう心の底から嬉しい、楽しいという気持ちが溢れていた。
そんな璃亜の笑顔を見たことがなかった仁王は、思わず言葉を失った。
…なんちゅー顔するんじゃ。
まるで別人ぜよ。
再びシュートを決めた璃亜が嬉しそうに俺に飛び付き笑顔を向ける。
「ほらほら、凄いでしょ?」
「わ、わかったから少し落ち着きんしゃい」
「ハッ…!?」
「…随分と大胆じゃな」
「ち、違う!違うからっ!!」
「クククッ…今更、逃げなさんな」
まさに我に返ったと言った感じだ。久し振りのバスケに我を忘れて喜び、楽しんでしまった上に仁王に飛び付くという普段なら絶対にしない様な事までしてしまい顔を真っ赤にして仁王から離れようとしたがそれを仁王が許さず、上手い上手いと言いながら璃亜の頭を撫でた。
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