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紳士様の眼鏡 (1/4)


あぁ、なんということだ!
今日の為に昨日の夜、あんなに必死にケーキを作ったというのに!

普通に家に忘れてきた。
マジでバカかよ。


という事があったのは、遠い朝の出来事である。というのも、今は部活が終わるというところだからである。

そして練習が終わり、汗を拭っている柳生くんの元へと向かう。



「柳生くん柳生くん」

「…?楠木さん、どうかしましたか?」

「今日、部活終わったら予定ある?」

「いえ、特にはありませんが…なにかあるんですか?」

「あ、あのね…本当はハンカチと別にケーキ作ったんだけどさ。持ってくるの忘れちゃって…」

「…っ!そ、そうだったんですか。では、取りに伺っても?」



さすがにブン太や仁王に聞かれると面倒なので柳生くんに耳打ちをしてケーキの事を伝えると少しだけビックリした様な反応をするとゆっくりとあたしに合わせるように屈むと今度は柳生くんが耳打ちをした。

お、おぉ…擽ったい!!

しかし、そんな事はどうでもいいんですよ!そしてパッと顔を上げるといいですか?と頭を傾げてる柳生くんにコクりと頷くと優しく頭を撫でられた。



「しかし、仁王くんに見付かると大変でしょう?仁王くんと一緒に帰宅後に連絡をしていただければ伺います」

「い、いやいや…もしならあたしが柳生くん家に届けに行くから、道教えてくれればすぐ行くし」

「まさか、そんな事させませんよ。最近はこの時間ですとかなり暗いですし、それに今日は風もあります。ですので、私が伺いますよ」

「え、でも誕生日なのに…」

「誕生日だからといって、楠木さんに無理をさせていい理由はありません」

「う、うーん…?むしろ、誕生日だからこそワガママ言っていいと思うんだけど」

「では、私が楠木さんの元へ伺いたいので…という事ならいいですか?」



あぁ、もうっ…!誕生日なのに欲がないなぁ!普通なら誕生日だからじゃあ家まで持って来いよ!シクヨロ!とか言うよ?まぁ、誰とは言わないけどね!?

ダメですか?と眉を八の字にする柳生くんにダメなんて死んでも言えないので、いいよ!と答えるとならよかったですと優しく笑った。

あぁ、ケーキだけ取りに来させるとか有り得ないから夕飯くらい御馳走しようかな。

いや、でも…誕生日だから柳生くん家では既に豪華な夕飯が準備されている可能性もある訳で…



「や、柳生くん?」

「はい?」

「誕生日はやっぱり家でパーティー?」

「…?いえ、特にそういった事はしませんが。お祝いの言葉をいただく程度ですよ」

「えと、柳生くんがいいならだけど…夕飯食べて行く?そんな良いものは作れないけど」

「…いいんですか?」

「あたしは全然いいよ?むしろ、ケーキだけ取りに来させるとか悪いと言うか…」



あたしの言葉に少しだけ驚いた様な反応をした柳生くんは、すぐにならば是非と軽く頷いた。


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