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1人じゃないから (1/4)


とりあえず、精市のカバンを差し出すとそれをゆっくりと受け取り頭を傾げる。



「一緒に行こう」

「え?」

「今から病院行こう?あたしも一緒に行くから」

「…………」

「怖いと思うけど…あたしが付いて行くから。精市は、1人じゃないからね」

「…わかった。ちょっと病院に電話するね」

「うん」



精市が昔、難病に掛かっていたという話は精市本人から聞いていたからある程度の症状とかは知っていた。

それにあたしは、色々と運動制限が掛かったりと大変だったけど…動けなくなったりした訳じゃないから精市みたいに入院もしなかったし、治療法がないから手術もしていない。

それでも色々と違うところがあるけど、病院に行くっていう事が凄い怖い事なのはわかる。あたしも怖かったし。

それが1人なら尚更怖くて行けないのは当たり前だ。だから、あたしの時みたいに大人数ではないけど…1人よりマシだと思うんだ。



「…今から来てくれって」

「そっか。じゃあ行こっか」

「本当について来てくれるの?」

「うん、あたしでいいならね…」

「俺は璃亜がいい…ありがと」



そう言いながら弱々しく笑う精市の手を握るとちょっとビックリした表情をしたが、すぐにあたしの手を握り返した。

ちなみに少しだけ部室に寄ると言って、あたしのあげたシロツメクサで作った冠をテニスコートのベンチに置いた。

そして俺の居場所はここだからと呟くとあたしの手を握り、足早に病院へと向かった


―――
――――
―――――


病院に着くとすぐに精市は、診察室へと案内された。さすがに中まであたしがついて行くことは出来ないので、不安そうな顔をしている精市の背中を笑顔で押した。

それにゆっくりと頷くと診察室へ入っていく精市の背中を見送り、待合室で必死に祈る様に手を組む。

…再発していません様に。

そして一体、何時間そうしていたからわからなくなって来た頃、診察室から精市が出て来た。



「璃亜、来てくれる?」

「…え、うん」

「ありがとう」



小さくあたしに笑い掛ける精市は、ゆっくりとあたしの手を握るとそのまま診察室へと連れていく。

そして精市の担当医さんが不思議そうな顔をしてあたしを見ていたので軽く頭を下げる。そりゃあそうだ…普通なら親御さんが一緒だと思うだろうし。

しかし、何かを察したのかコクりと担当医さんが頷き、特にあたしには突っ込まず手元の紙の束にパラパラと捲った。


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