地雷除去します (1/4)
蔵は、伏し目がちにゆっくりと話をしてくれた。正直、あたしが思っていた以上に蔵は色々なものを溜め込んでいたらしい。
むしろ、中学の時からずっとこの状態だったのかと思うと胸が痛む。
やっぱり、部長って言うのは色々と背負っちゃうんかなぁ。
「みんなの言う、完璧な白石蔵ノ介になろうと思っててん。せやけど、段々完璧ってなんなんかわからん様になって」
「あたしは普段の蔵を知らないからよくわからないけどさ、全てを完璧にこなせる人なんていないと思うんだよね」
「せやけど…」
「あたしも蔵のテニスを見て、みんなに完璧なテニスって言われるのも頷けるなぁって思ったけど、それはテニスが好きだから出来る事なんじゃないかな」
「……ん?」
「だからテニス以外で完璧を目指す必要はないんじゃないかな。周りがいくら完璧を求めたところで、蔵は蔵なんだし」
それ以上でもそれ以下でもない。確かに、完璧に何事も出来るならそれに越したことはない。だけど、無理してまでやる事じゃないと思うんだよね。
現に蔵は、それが重荷になってるみたいだし。まともに自分を出せなくなってる。
完璧だから、白石くんだからと…縛り付けられてまともに弱音も吐けないとか辛いわ。
「その周りの期待に応えようとするのは良い事だと思う、だけど凄く大変な事だとは思うんだ」
「おん」
「それと、うちの部長さんもだけど…蔵は、1人じゃないんだからもっとチームメイトを頼りなよ」
「せやから、俺は…」
「テニス部のみんなは、蔵にテニス以外も完璧だねって言った?完璧になれって言った?」
「…言うてへん」
「後、試合に負けたのは確かに悔しいし辛いし自分を責めたくもなる。それに部長が負けるってのがどんだけ重大な事かもわかるよ?でもさ、1人で戦ってんじゃないんだから」
試合に負けたとしても自分の全てを出し切ったのなら、むしろあたしはそれを誇っていいと思う。それに手を抜いたり、諦めたりしてないならまだ強くなれると思うし。
それに部長だからといって、全てを背負う必要はない。ここまで、一緒に頑張って来たチームメイトがいるんだから。
まぁ、近いからこそ言えへん事なんやろうけど…って言ってたけど、本当にその通りだから困る。
立海もそうだったみたいなんでね。
「あたしは、四天宝寺じゃないし?むしろ、負かしちゃった学校のマネージャーだけどさ…あたしは、友達だと思ってるから」
「…………」
「チームメイトに言いにくいなら話くらいは聞くし…えーと、なんて言うか…無理して笑わなくていいんじゃない?」
「そんなんズルいで…」
「正直、あたしには完璧な蔵とか想像出来ないし。むしろ、謙也とバカやってひーちゃん達にドン引きされてるのが蔵だと思ってるし」
「ハハッ、それはそれで酷いやんけ!」
「あ、笑った。でもまぁ、泣きたいなら無理して笑わないで泣けばいいと思うよ。我慢はよくない!なんなら、このあたしの胸を貸してやろう!」
「…自分、男前過ぎやろ」
まぁ、あのブン太も泣いてたし。むしろ、赤也にはよく泣き付かれるからね。
それに男だから女だからとか関係ないと思うんだ。泣きたいなら泣けばいいよ。
別にカッコ悪い事じゃないし。
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