全国大会最終日:中編 (1/4)
D2の試合が始まって10分。
特に変わったところはない。
ブン太もジャッカルくんも絶好調みたいで、良い感じにポイントを取ってる。
ジローちゃんは、相変わらずテンション高いみたいでさっきから悔Cー!とか騒いでる。樺地くんは、それを止める訳でもなくただ見てるだけみたいだけだ。
途中でベンチに戻って来た時も特に変わったところもなかったし…正直、仁王達がなにをそんなに心配してるのかがよくわからなかった。
しかし、それは突然訪れた。
4-2でブン太とジャッカルくんがリードをしていた。そしてここから一気に決めるつもりだったのか、ジャッカルくんとシンクロをしたブン太が完全な攻めの姿勢に入り技を連発していた時だった。
ジローちゃんの様子がおかしくなったのだ。
急に激しい光に包まれたと思ったら、ジローちゃんがオーラを纏っていた。
あ、あれって無我…?え、でもなんか全然雰囲気が違う。なんでかわからないけどあたしの体がカタカタと震える。
それに加えて会場がザワザワと騒ぎ出す。
「おいおい…まさか、跡部はこんな博打を狙っとったんか」
「し、しかし!これは、想定外過ぎますよっ…!」
「むっ…!芥川が天衣無縫だと!?な、何故だ!」
「…ふふっ、これは跡部に一杯食わされたね。芥川は、昔から誰よりも純粋にテニスを楽しんでいた…どんな辛い状況でも彼は、楽しそうに笑顔でテニスをしていたからね」
「うむ…そして長年、丸井との対戦を望み…今、こうして全国大会決勝という舞台で戦う事が出来た」
「つまり、今の芥川にとってこの試合以上のものはない訳だ」
話には、相変わらず付いていけないけど…あのジローちゃんが纏っているオーラがヤバいという事だけはわかる。
ジローちゃんの動きが…まるで別人の様で、シンクロしているブン太とジャッカルくんが全く反応出来ていない。
でもジローちゃんは、凄く楽しそうで笑顔のままだった。
「璃亜、大丈夫か?無理もない、アレを見るんは初めてじゃろうし」
「…う、うん」
「あ、有り得ねぇッスよ…!丸井先輩とジャッカル先輩がっ…」
「芥川を止めない限り丸井とジャッカルに勝機はない」
「…で、でもッ!!」
「うむ、それになにもしてない様に見える樺地が実は良い仕事をしている」
…隣に座っていた仁王が心配そうにあたしの顔を覗き込みながら手を振る。
そして後ろで赤也が騒いでいたが、真田くんに黙ってよく見ていろと言われて静かになった。
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