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齋藤コーチの声にゆっくりと構えていたラケットを下ろす。そして目の前で息一つ乱してない毛利さんを睨むように見上げる。
「クッソ!1ポイントも取れなかった!!」
「でもえらい上手かったで?」
「うるせぇよ!全部、返しやがって!!」
「それにあれ打ってないやん。修さんが取れんかったやつ」
「なんかあっさり返されそうだから打たなかった」
「ははっ、可愛いやっちゃなぁ」
そう言いながらあたしの頭をわしゃわしゃと撫でる毛利さんにイラッとしたのでそのままコーチ達の元へと歩き出すと、待ってやーとか言いながら毛利さんが後ろから飛び付いて来て面倒臭い。
てか、あたしは毛利さんと違って汗掻いてるから普通に離れて欲しいんだけど!
しかしそんなのお構い無しと言った様子であたしに覆い被さるようにして歩く毛利さんにもう面倒臭いからいいや…とコーチ達の元に向かった。
「お疲れ様です。体調は大丈夫ですか?」
「あ、まだ全然大丈夫ッス。てか、毛利さん離れろし!」
「ほんで、璃亜はどないな感じです?」
「おい、無視か!」
「えぇ、とても興味深い逸材です。サポート選手として参加する分には問題ありません」
「でも身体検査の方でオッケーが出たらだけどねぇ」
「…ふふ、毛利さんはそろそろ璃亜を離してくれませんか?嫌がってますし」
「せ、精市!良い事言った!」
そして軽くあたしの腕を掴むと精市が毛利さんを剥がしてニコリと笑うとあたしを腕を引いた。
いやぁ、助かったぜ…あたし汗掻いてたからね。凄く嫌だったんですよ。普通に汗掻いてる状態でくっつくとか嫌じゃない?汗臭っ!みたいに思われたら嫌だし。
こう見えてもあたし女の子ですしね!そういうところは、気にしますよ。
「おやおや…これは、またいいメンタル強化が出来そうですね」
「では、とりあえず身体検査の結果が出るまで休んでいて下さい」
「あ、このジャージとラケットは?」
「ジャージは、差し上げます。着替えの際に要らないのであれば置いていって下さい。ラケットは毛利くんのですので彼へ」
「え、これ毛利さんのだったの?貸してくれてありがとう。あ、ジャージは有り難く貰っときます」
とりあえず、今はまだジャージでいよう。普通に動きやすいし。そしてラケットを毛利さんにお礼を言って差し出すとふにゃりと笑ってあたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
いや、意味がわからないし。
まぁ、コーチ達がいう通りに結果が出るまで大人しくしてよう。特にやる事はないし。
「もしなら、施設を回って見るのもいいんじゃないかな?結果が出たら放送で呼んであげるし」
「なら、俺が案内してやるから行くで」
「イヤァァァ!だからあたしが返事をする前に連れて行くのやめろよーー!!」
そして齋藤コーチの一言によりあたしは、毛利さんに手を引かれてコートを後にした。
いや、なんか凄い勢いで精市と跡部くんが追い掛けて来てるし、なにあれ怖い。
あ、早苗が凄い笑顔で手振ってる…ひ、酷い!
(…ふふ、勝手に連れて行かないで貰えますか?)
(なんや、幸村と跡部。なんか用か?)
(アーン?つーか、随分と仲が良さそうじゃっ)
(面倒だから説明はしないよ)
(璃亜とは秘密の関係やで)
(ふふ、勝手に話をややこしくしないで下さい)
(いや、もう…あたしは施設を回って来るから好きにやっててくれ)
(あかんで、璃亜)
(ふふ、行かせるとでも?)
(アーン?ちゃんと説明しやがれ)
(なんなんだよ!面倒くせぇな!)
(璃亜は、すぐ怒るなぁ〜)
(うるせぇよ!おい、抱き付くな!)
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