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そして試合を中断させて仁王と交代してコートに立つ。あからさまに仁王がやめろと言わんばかりの顔をしていたが、無視である。
「自分、マネージャーやろ?相手は試合のあとにしたるからっ…」
「…うっさいッス。ていうか、この試合の5分の間にあたしが1ポイント取ったら帰って下さい」
「…ほぅ?なかなかええ球打つなぁ?ええで、1ポイント取ったら帰ったる」
「それとあんたが攻略したがってる技は、仁王の技じゃなくてあたしの技なん、でっ!」
「………っ!へぇ、おもろいやん」
サーブを思いっきりチャラチャラしたヤツに向かって打った。もちろん、当てるつもりはない。ただの威嚇です。あと、ちょっとムカついたから。
まぁ、当然フォルトだからまたサーブを打つと容赦ないリターンが返ってくる。
これあたしじゃ返せないな。
クルッとラケットと回して逆手に持ち変えて、グリップエンドで打ち返す。
うはっ、これで返しても腕が痺れるんだけど…マジで容赦ねぇなあのチャラチャラ。
「へぇ!やるやん」
「そりゃ…どうも」
「ほな、技出してみ?ほれ」
「うっざ…」
さっきとは比べ物にならないくらいゆるいチャンスボールが返って来て、イラッとする。
つーか、毛利さんが言ってたけど…このチャラチャラはどんな球の変化も目で全て理解して全て無にして返すんだっけ?んで、弦ちゃんのトリプルクラッチなら対抗出来るとかなんとか…柳くんが言ってたな。
まぁ、全ての球を返せるっていうならこっちは返せない球を打てばいいって事でしょ?目で全てを把握して理解してんならされなきゃいいだけだ。
それに弦ちゃんのトリプルクラッチはまだ模倣出来ないから、まぁ…こうなるよね。
「…っ!お望み通り!どうぞ!」
「…っ!」
「……………」
「……………」
「全てを無にして返すんじゃなかったんですか?ボール返って来ないんですけど」
「……………」
「まぁ、1ポイント取ったんで帰って下さい」
「自分、何者なん?」
「ただのマネージャーですが」
あたしが放ったボールは、チャラチャラのラケットをすり抜けるとその場にストンと落ちた。
ていうか、あたしのウェザーヘヴンは基本的に肉眼で見えてる時は無回転にしか見えないから。理解されなきゃいいんだから余裕で返されない球である。
だって肉眼で確認出来る情報は無回転(に見える)のスマッシュってだけだし。
ウェザーヘヴンはラケットに当てられさえしなければ、決まるしね。それに天ぷらの才(天賦の才)だかなんだか知らないけど伝達する情報がなけりゃ意味ないっしょ。
そしてゆっくりとコートから出てブン太にラケットを返すと凄い勢いで後ろから誰かに覆い被さられた。
(なぁなぁ、自分名前は?)
(……なんですか?帰って下さい)
(つれんなぁ…毛利、名前は?)
(ん〜、楠木璃亜。てか、抱き付くんあかんっす)
(うぎゃっ!毛利さんもやめろ!)
(璃亜も強化合宿来るんやろ?)
(ほな、俺が推薦しといたるわ)
(っ、話を聞かねぇな!おい!離せって)
(もーう、修さん離したって)
(毛利さんもだよ!クソが!)
(ハハハッ!自分、口悪いねんなぁ)
(笑ってんじゃねぇ!離せっ…ぬわ、仁王!)
(話がわからん…ちゃんと説明しんしゃい)
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