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壁に目をやったのは時間の確認だったのか…ったく、可愛い事してくれるぜ。
時間は、0時ちょうど。
わざわざ時間まで合わせやがって…
「あ、跡部くん…?ご、ごめん…怒ってる?」
「アーン?なんで俺様が怒る必要がある」
「い、いや…こんなチンケなもん渡しやがって的な?」
「…バーカ、今まで貰ったプレゼントの中で一番だ」
「そんなバカな」
ったく…普通に考えて怒る訳ねぇだろ。むしろ、嬉しくて顔がニヤけるくらいだっての。
腕の中で不安そうに顔を傾げながら俺を見上げる璃亜の頬を撫でると璃亜の顔がうっすらと赤くなる。
…誘ってんのか、こいつは。
「そ、そんな嬉しそうな…顔しないでよ。こんな小さなケーキしかあげられなくて…恥ずかしいってのに」
「アーン?嬉しいんだから仕方ねぇだろうが」
「ふ、普通に言わないでよ!そ、そりゃあ…喜んでくれたならあたしも嬉しいけどさ」
「…璃亜、」
「な、なんでしょうか?」
「…敬語やめろ。もう1回言ってくれねぇか?」
「えっ?」
ポカンとしたような顔をして俺を見上げる璃亜を見つめると、やっと意味がわかったのかハッとした顔をするとすぐに笑顔になった。
バカヤロウ…言う前から、んな顔すんな。
へへっ…なんて笑いながら俺を見上げる璃亜の顔は恥ずかしいのか少しだけ赤い。
それがまた可愛いと思ってしまうのは、惚れた弱味か。
「よしっ!跡部くん、」
「あぁ」
「お誕生日おめでとう!」
「…フッ、ありがとよ」
「やだ、改めていうと恥ずかしい!あと、そんな顔でこっち見ないで!」
…フッ、ダメだ。
恥ずかしいなんて言いながら嬉しそうに笑う璃亜を自然と抱き締めてしまう。
このままお前が欲しいなんて言ったら璃亜は、どんな顔をするんだろうな。
腕の中で跡部くんの匂いがぁぁとか言いながら騒いでいる璃亜の頭を軽く撫でて、腕の力を緩めると璃亜がゆっくりと顔をあげた。
その瞬間、璃亜のオデコにキスを落とすとポカンとした顔がカァッと一気に赤くなっていく。
すげぇな…おい。
「なっ…なななにをっ!」
「フッ、お礼だ」
「意味がわかっ…ちょ、近いよ!跡部くん近い近い!!」
「アーン?唇がよかったならそっちにしてやるが?」
「い、言ってねぇし!!」
「フッ、ほらケーキ食べるぞ」
「もうやだこのキング!自由過ぎかよ!」
「アーン?璃亜が食べさせてくれるんだろ?」
「クッソ!わかったよ、いいよ!ほら、食えよ!」
そしてギャーギャーと顔を真っ赤にさせている璃亜と一緒にケーキを食べた。
跡部くんは甘い好きでも嫌いでもないって聞いたから、甘さ控えめにしたなんて言ってたが…璃亜の作ったケーキは凄く甘く感じた。
※ケーキ食べて少し経った後
(璃亜、寝るぞ)
(ん、じゃあまたあしたっ…うわ)
(アーン?もうここで寝てけ)
(ん…なんでそうなったし)
(もう眠くて仕方ないんだろ?)
(ん〜うん?眠いけど…部屋戻る)
(いいから、寝るぞ。おい、立ったまま目を瞑るな!)
(ん〜大丈夫大丈夫…わっ…運ぶな運ぶな〜)
(…ったく、ほら寝ていいぞ)
(ん…跡部くんの匂いがやべぇ…)
(ほら、もう少しこっちこい)
(ん〜っ…跡部くんあったかぁ…)
(そりゃあよかったな)
(んっ…跡部くん、おやすみ〜)
(…あぁ、ゆっくり休め)
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