大事なのは気持ち (1/5)
ヤバい、マジでヤバい。
なにがヤバいって今、あたしがいる場所がヤバい。
「う、うわぁ…」
「どうだ?」
「あたし、絵には詳しくないけど…めっちゃ綺麗」
「ふっ、素直な感想だな。つまらないと言われるかと思ったが」
「まさか、あたし美術館とか好きだよ。詳しくないけど、絵を見るのは好き」
跡部くんが連れて来てくれたのは、あたしなんかでも聞いたことがあるくらい有名な美術館だった。
軽く顔パスで入れる辺り、さすがは跡部くんと言うべきなのか…むしろ、今日は俺様の貸し切りだから好きなだけ見れるぜ?なんて言いながら笑ってる跡部くんに驚きである。
なんだよ、美術館貸し切りって。やっぱり、跡部くんって色々やべぇな。
でも美術館は本当に好きなので自然と作品に目が行ってしまう。
あぁ、この絵も神秘的で凄い綺麗だなぁ。名前とか意味とか全然わからないけども。
「てか、跡部くんが美術館に来たかったんじゃないの?」
「いや、まぁそんなところだ。オペラと迷ったが、美術館なら少しは璃亜の気を引くものがあるかと思ってな。まぁ…正直、こんなに喜んでくれるとは思わなかったがな」
「なにその贅沢な2択。ねぇねぇ、跡部くんはよくここに来るの?」
「たまにな」
「なら、跡部くんのオススメっていうか…好きな作品とか教えてよ。あたし、詳しくないから説明とかしてくれると嬉しい」
「…仕方ねぇな。ほら、こっちだ」
そう言って軽く笑うと跡部くんがあたしの手を引いて歩き出す。
貸し切りってだけあって凄く静かであたしと跡部くんの歩く音とたまに作品の説明をしてくれる跡部くんの声だけが響く。
なんか美術館って凄いドキドキするよね。この作品はどんな気持ちで描いたんだろう…とかこの絵の意味は実は他にあるんじゃないかとか色々考えたりしたり出来て楽しい。
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目をキラキラとさせながら俺の説明に耳を傾けながら作品一つ一つを見上げている璃亜に自然と笑みが溢れる。
本当に素直なヤツだな。
"詳しくはないけど、絵を見るのは好き"
正直、俺に気を使って絵が好きだと言ったのかと思えば、俺様そっちのけで作品を見つめてやがった。
そういやぁ…こいつもかなりの変わりもんだしな。考え方がズレてるなんて思ってたが…よく言えば、人とは違った考え方や見方が出来るって事だからな。
「璃亜、なにか創作は得意か?」
「え?ん〜得意って訳じゃないけど、絵を描くのとか作詞とかは好きかな」
「フッ、なるほどな」
なんで?と頭を傾げている璃亜に気にするなと軽く頭を撫でるとふーん?とまた作品に視線を戻した。
フッ、本当に色々と想定外で飽きないヤツだな、お前は。
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