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でも腕も軽い擦り傷くらいでよかった。いや、ジャッカルくんの腕を傷付けた罪は重いけどな。
「…なぁ、楠木」
「ん?どっか痛い?」
「い、いや…怪我は大した事ねぇよ」
不意にジャッカルくんがあたしに声を掛けて来て、ゆっくりと顔を上げると何故かすまなそうな顔をしてあたしの頭を撫でた。
え?なんだ、どうした?
ジャッカルくんの急な行動に軽く頭を傾げる。いや、ジャッカルくんに頭を撫でられるのは嫌ではないんだけどね?
「…本当にみんなに言わないでくれたんだな、サンキューな」
「え?あ、あぁ!当たり前じゃん、約束したからね!」
「それに移動教室まで…マジでありがとな」
「実は、ストーカーの才能があるのかもしれない…」
「でもよ…幸村にも言われたけど、楠木に言っちまって後悔してたんだぜ…」
…え、なんでや!?
いや、確かに…あたしじゃ頼りなかったかもしれないけど。後悔するレベルなの?え、なんか普通にショックです。
あれ、マジでショックだ…ヤバい。
てか、そんなにあたしって役に立たないのかな。い、いや…マジで役に立ってないけどさ。
「…楠木になんかあったら…って思ったらさ。すげぇ怖くてさ、言わなきゃよかったって…」
「え?あたしが役に立たないから言わなきゃよかったって…」
「…いや、言ってねぇよ。でもなんつーか…すげぇ俺の為に色々考えて心配してくれたんだなって考えたら、楠木に話してよかったなって思えてさ」
「ジャ、ジャッカルくん…」
「それに今回だって楠木が一番に助けに来てくれて、俺の為に怒ってくれただろ?すげぇ嬉しかった」
だから、ありがとな…なんてあたしの頭を優しく撫でるジャッカルくんの笑顔が優し過ぎて、目の前が滲む。
いや、普通に間に合わなかったし。あたしなんて全然役に立てなかったし、なにもしてないよ。
きっと、あたしじゃない人に話してたらもっと違う…もっとジャッカルくんが怪我なんてしない結果だっただろうし。
「…おい、なんで泣くんだよ」
「だってぇぇ!!あたしがもっとジャッカルくんを監視してれば!ストーカーになりきってればっ…!」
「…それはそれでこえーよ。つーか、俺は楠木になんもなくてマジでよかったって思った。俺のせいでまた怪我したりっ…うお!」
「ジャッカルくぅぅぅん!!もう、あたしジャッカルくんのストーカーになるね!任せて!!」
「おい、なんでそうなった!?」
自分よりもあたしを心配してくれていたジャッカルくんは、本当にバカだと思う。
でも素直にジャッカルくんの気持ちが嬉しかったので飛び付いてやった!そしてストーカーはやめろってマジトーンで言われた、酷い。
(ジャ、ジャッカルーーー!?)
(ブ、ブン太…いやこれはっ…)
(お前、部活中だろなにやってんだ!)
(いや、それお前もだろぃ!?)
(あたしはジャッカルくんと仲良くしてんだよ)
(つーか、なんで泣いてんだよ!?)
(あ?うっせぇな!感動の涙だよ!!)
(意味わかんねぇし!!)
(と、とりあえず…楠木は離れろって…)
(ジャッカルくんは、あたしが嫌いなのか!)
(い、いや…そうじゃねぇけど)
(おら、ジャッカルが嫌がってんだろぃ!)
(別に嫌ではねぇけど…)
(ジャッカル、テメッ!)
(ヤキモチか!ジャッカルくんはやらんぞ!)
(お前バカだろぃ!マジでバカだろぃ!!)
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