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不思議そうな顔をしている赤也の手を軽く握るとビクッと赤也が反応する。
「寒いのは嫌いだけど、冬って人の温かみがわかるから好き」
「……えっ」
「病気になって初めての冬にね、みんなと同じ格好してるのにあたしだけ死ぬくらい寒くてさ、それが辛くて泣いた時があったんだよね。そしたらさ、早苗がおいでって寒いなら私が抱き締めてあげるからって泣いてくれたんだよね」
「………羽川さん半端ないッスね」
「でしょ!もう早苗は、あたしの王子様だと思ったね!だから、寒くても冬を嫌いにならずに済んだんだよね」
それに厚着するのが嫌なら私も同じ格好するからって、あたしに合わせてくれたりとか…あぁ、思い出すだけで泣きそうになるなぁ。
本当に早苗には、いっぱい迷惑掛けたし…助けて貰ったなぁ。
ちなみに今となっては、さすがに寒さには慣れないが厚着やら防寒に関しては慣れたもんで全く気にしていない。
だって寒いもんは寒いし。
倒れたりして目立つくらいなら厚着して目立つ方がマシだしね〜。
「お、俺も!」
「はい?」
「寒かったら言って下さい!」
「あぁ、確かに赤也は体温高いもんねぇ」
「なんで知ってるんスか!」
「え、赤也ん家に泊まった時に体温高いなぁ〜って。まぁ、あたしからしたら普通にみんな体温高く感じるけどね」
だからさっきから握ってる赤也の手は、あたしの手に比べて随分と温かい。
こういう温かみを感じるとなんか寒いのとか気にならないって言うかなんていうか、寒いからこそわかるっていうか。
まぁ、元から冬が好きだったのもあるけどね。
そしてそんな話をしている内に無事にマンション前まで着いた。
「赤也の誕生日なのになんであたしが送られたのかわからないけど、送ってくれてありがとね」
「いいんスよ!なんか色々、話せて嬉しかったッス!」
「ならよかったけど」
「でも1ついいッスか?」
「おん?どうした?」
「璃亜せんぱい、はいっ!」
「…ここマンション前なんですが」
「はいったらはいっ!」
いや、うん…さっきあんな話をしたあたしが悪かったな。
目の前の赤也は両手をいっぱいに広げて、あたしを見つめている。つまり、赤也に胸に飛び込めと。
いや、まぁ…うん。誕生日だし、少しくらいワガママを聞いてやろう。アレだ、多分…早苗の真似がしたいのだろう。
「んっ、これで満足かね」
「わっ…璃亜せんぱい」
「やっぱり赤也は体温高いなぁ」
「なら、毎日抱き付いても殴りません?」
「え、殴るわ」
「ちょ、最近、我慢してたんスよ?」
あぁ、そういえば最近飛び付いて来てないな。いや、それが普通なんだけどね。
(ほら、もう帰りたまえ)
(明日から俺が温め係ッスからね!)
(お前は、レンジかなにかか)
(寒くなったら呼んで下さい!)
(いや、呼ばんよ)
(なんでッスか!)
(いや、まだそんな寒くないし)
(寒くなったらッス!)
(はいはい、忘れなかったらね)
(それ絶対呼んでくれないッスよね!)
(いいから、気を付けて帰りなよ)
(ダッシュで帰るッス!)
(人の話聞いてた!?)
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