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そして診察室を出るとすぐに少しお話があるからと看護師さん精市が連れていかれる。どうやら、処方箋の話らしい。
とりあえず、精市の病気が再発した訳じゃない事に安心しつつ待合室で待っていると診察室から精市の担当医さんが出て来た。
「何度もごめんね。さっきね…本当は、心療内科を紹介しようかと思っていたんだ」
「は、はい」
「でも精市くんは、凄く気を遣う子だから…余計にストレスになっちゃうんじゃないかなって思ってね」
「そうですね」
「それに君が隣にいるだけで随分と精市くんが安心してるみたいだったから。君も大変なのは重々わかってるけど、精市くんの事支えてあげてね」
「あたしは、何をすればいいんですか?」
「何をする訳じゃないけど、ただ誰かが側にいるだけでも人間って物凄く安心するもんだから」
あぁ、だから精市はサボってまであたしのところに来たのかな?いや、誰かと一緒にいたかったなら屋上に行けば高確率で仁王がいる訳だし…本当は1人になりたかったのかも知れないな。
でもよかった。
いくら再発してなかったと言っても、あのままあたしに会わなかったら精市はずっと1人で病院に行けずに不安だっただろうし。
それにあたしが側にいるくらいで精市が安心してくれるなら、お安いご用だ。
先生の言葉にコクりと頷くと本当に噂に聞くいい子だねなんてあたしの頭を撫でた。
「おっと、ごめんよ。セクハラで訴えられちゃうな!」
「ハハッ、そんな事しませんよ」
「それと氷室先生も言ってたけど、女の子なんだからあんまり無茶しちゃダメだよ?」
「へ?」
「その腕の怪我。跡部財閥のお坊ちゃんには報告されてないだろうけど、氷室先生には報告されてるからね?もちろん、僕の耳にも入るくらいには噂になってたよ」
「…マ、マジッスか」
「ははっ、定期検査で氷室先生に怒られない様にね」
じゃあお大事にね?と笑うと軽く手を振り診察室へと戻って行った。
とりあえず、あたしの噂が気になる。あいつ怪我ばっかりしてるんだぜ?みたいな感じかな。なにそれ恥ずかしい。
そして氷室先生がこの腕を見てまたヤンチャして…と言いながら笑う姿まで想像出来た。
「璃亜?」
「…お、おぉう!」
「…先生となに話してたの?」
「えと、なんかあたしの腕の怪我も知ってて、君もあんまり無茶しちゃダメだよって言われた」
「あぁ、手当てして貰ったのこの病院だしね。それに璃亜は有名みたいだからね」
「跡部くんマジでハンパねぇわ」
とりあえず、後で跡部くんにお礼を言いに行こうかと精市と話しつつ、病院を後にした。
本当に跡部くんには頭が上がらないなぁ。
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