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その瞬間、精市の肩がビクリと跳ねるのがわかり膝の上で固く握られている精市の拳にソッと手を重ねた。

それに気付いた精市がゆっくりと拳を開いて、あたしの手を握る。心なしか精市の手が震えてる気がする。

…やっぱり怖いよね。



「再発している可能性があったから、すぐに検査の結果を出して貰ったんだけどね。結果から言うと…特に異常はなかったよ」

「…再発はしてないと?」

「うん、数値も正常だしね。それに頭痛もあったって言ってたよね?」

「…はい」

「それでね、その手の痺れや頭痛はストレスから来るものかもしれない。最近、ストレスを感じる事はあった?」

「い、いえ…特には。むしろ、最近はかなり充実してましたし…疲れはあったかもしれないですけど」



とりあえず、再発はしていなかったみたいでそこは安心した。でも手の痺れの原因がストレスかもと言われて、思わずうつ向いてしまう。

…あたしのせいなんじゃないだろうか。精市は特には…なんて言ってるけど、あたしがバカみたいな無茶したりしてかなり心配を掛けてると思うし。思い当たる節が多すぎてヤバい。

精市は、元から溜め込むタイプっぽいし。余計にストレスを感じてたのかもしれない。



「…あ、思い出した。君、楠木璃亜さんだよね?例の奇病の。まさか、精市くんと知り合いだったとはね」

「えっ…あ、はい」

「なんで先生がそれを?」

「跡部財閥のお坊ちゃんからなにかあった時はって、この辺りの病院は君を受け入れられる様にと最低限の設備を提供されてね」

「え、跡部くんが…」

「それに精市くんの病気も再発の危険があるのを知っててね。今回、すぐに結果を出せたのも跡部財閥のお坊ちゃんのお陰なんだよ」



……跡部くん、本当にあたしが知らないところで色々とやってくれてたんだね。

さすがに精市もそれは知らなかったらしく、一瞬目を見開くとゆっくりと目を伏せてそうですか…と呟いた。

これは後で跡部くんに土下座する勢いで頭を下げに行かなきゃならんな。て言うか、なんでかあたしが泣きそうだよ。



「あ、ごめんね。話が反れちゃったね。それでストレスについてだけど、人間って不思議なもんでね。嬉しい出来事でも、それがストレスになる事もあるんだよ」

「…そうですか」

「つまり、精市くんは自分では気付いてないだけでストレスを溜め込んでたって事ね」

「…ストレスですか」

「とりあえず、頭痛薬は出しておくけど…なにかあったらまた連絡してくれる?」

「はい」



ゆっくりと立ち上がり、あたしの手を握ったまま軽く先生に頭を下げて診察室を出て行こうする精市にあたしも先生に頭を下げつつ後を追って、診察室を出た。


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