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俺の声に振り返った鈴木は、忌々しそうに俺を睨むとすぐに璃亜に向き直りなにかを言うと笑顔を向けていたのか一気に無表情になりこちらに歩いてくる。
「邪魔しないでくれる?」
そう俺にしか聞こえない声で呟くと鈴木は、俺を通り過ぎて部屋から出て行った。
そしてすぐに璃亜に駆け寄り抱き締めると喧しく騒ぐ璃亜に安心する。
とりあえず、鈴木にはなにもされとらんみたいでよかった。それにしても…あやつ、危険じゃな。
「おい!聞いてんのか!!」
「…なんじゃ?」
「いい加減、離せ!そして早く片付けをしろ!帰れねぇじゃねぇか!!」
「俺を走らせた罰じゃ、もう少しこのままでいるナリ」
「は、はぁっ!?てか、なんか香水臭い!また女か!だから電話に出なかったのか!クソが!」
「…しつこくまとわり付かれてただけじゃ。相手にしとらん」
ハァ、なんか一気に疲れたナリ。こんだけ元気なら本当になにもされとらんじゃろうし。
それにしても、まさか鈴木が俺の足留めに女子を使うとはな。あやつ、思っていた以上に厄介なヤツみたいじゃ。
夏休みは、璃亜が忙しくてまともに相手しとらんかったんじゃろうが…マズイのぅ。
参謀どころか、幸村達にも注意する様に言っといた方が良さそうナリ。
「ねぇ、なんかあったの?」
「いきなり、なんじゃ?」
「なんか珍しく切羽詰まった顔してるから。女の子達になんか言われたの?」
「…いや、なんでもなか。とりあえず、鈴木には気を付けんしゃい」
「…?なんで鈴木くん?」
「いいから、あやつと2人にならん様にしんしゃい。遊んだりしたらダメじゃ」
「いや、遊ぶ予定はないけど。てか、本当に大丈夫?なんか凄い急いで来たみたいだけど…逃げて来たの?」
なにかを感じ取ったのかずっと俺の胸を押していた璃亜が大人しくなり、俺を見上げていた。
いや、なんで俺がこやつに心配されとるんじゃ。色々と危なかったんは、お前さんなんじゃが。
でも心配そうに俺の腕の中で頭を傾げている璃亜が可愛いから、もう少しこのままでいいぜよ。それにある意味、逃げて来たようなもんじゃしな。
「ねぇ、片付けは?今日中にやらないと島ちゃんが課題出すって言ってたんだけど」
「このくらい2人なら余裕じゃき、心配せんでもいい」
「なら、とりあえず離そうぜ?あたしは、早く帰りたいんだ」
「仕方ないのぅ。さっさと終わらせて一緒にご飯食べるナリ」
「なんで一緒にご飯食べる事になってんだし。いや、確かにお腹も空いたけど」
「今日は、俺が作ってやるぜよ」
「マジで?なら一緒に食べるわ」
相変わらず、チョロいナリ。
璃亜は、俺の料理が好きらしくなにかと作り方を聞いてくる上に、俺が作るからと言えばなんだかんだで一緒に飯を食べてくれる。
さぁて、なにを作ろうかのぅ。
※仁王宅にて
(ほれ、出来たぜよ)
(なにこれ?)
(残り物で作った男飯)
(あたし女なんだけど)
(そこは関係ないんじゃが)
(えぇ、なにこれ?見た目悪っ!)
(まぁ、味は保証するけん)
(…うわ、美味っ!!)
(じゃろ?ゆっくり食べんしゃい)
(美味し美味し〜!)
(それは、よかったナリ)
(仁王って見掛けによらず料理出来んのが腹立つよね)
(そこは、誉めるところじゃろ)
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