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あ、切原くんが真田くんに投げ飛ばされてる。
璃亜は、仁王くんと丸井くんに追い掛け回されていて、それを柳生くんと桑原くんが必死に追い掛けている。
「羽川はさ、やっぱり璃亜を大切にしてくれるヤツなら誰でもいいんだろう?」
「誰でもいい訳ではないけど、璃亜が選んだ人なら私はなにも文句は言わないつもりよ。例え、幸村くんであろうとね」
「ふふふ、それはよかった。羽川は、口煩そうだし」
「随分と余裕そうね」
「ふふふ、そう見える?これでも色々我慢してるんだけど」
「早苗」
「………?」
不意に名前を呼ばれて横を向くと何故か、蓮二が私の頭を軽く撫でた。最近は、こうやって人前で私の頭を撫でたりする事ヤケに増えた気がする。
別に嫌な訳では、ない。むしろ、私も蓮二に触れられるのは好きなので嬉しいくらいなんだけれど…
なんでこのタイミングで?
蓮二が私の頭を撫でた意図が掴めず頭を傾げているとクスクスと幸村くんが笑い出す。
「ハハッ、羽川って璃亜とまではいかないけどたまに抜けてるよね」
「フッ、可愛いだろう」
「蓮二、ノロケるなら海に投げ飛ばすよ」
「それは遠慮願おう」
「…なんの話?」
「うむ、簡単に説明すると精市はあの場に行くのを我慢している。璃亜の為と言うより自分自身の為だがな」
「最後のは、余計だけどね」
…我慢している?何故?
幸村くんが璃亜に好意を抱いているのは、行動や言動で明らかだ。
それにいつもの幸村くんならあの場に混じって、他の人達から璃亜を離す為に暴君になると思っていたのだけれど…
確かに、璃亜は幸村くんに遊ばれ過ぎて色々と意識し過ぎて避けてる気はするから璃亜の為にと言うならまだわからなくもないけれど…そうじゃなく自分の為となるとますます、意味がわからない。
「まだ璃亜は、心身共に十分に余裕がある状態じゃないだろ?だから今は、我慢してるんだよ」
「それは、璃亜の為でしょう?」
「あんまり攻め過ぎるとこっちの歯止めが利かなくなるって言えばわかる?」
「なるほど…そういう事ね。だからと言って、他の人達が璃亜を放っておくとは思えないのだけれど」
「ふふふ、そうだね。他の奴等もまさか無理強いはしないだろうけど、羽川的にその辺りはどう思ってる訳?」
「口出しするつもりはないけれど、きちんと気を付ける様には言ってるわよ」
「それでアレなの?本当に璃亜って自覚ないんだね。まぁ、わかってた事だけど」
でもある意味、無理矢理手に入れるのは簡単なんだろうなぁ〜なんて意味深な事を呟きながら未だにギャーギャーと騒いでる璃亜達を見つめる幸村くんを少しだけ怖いと思った。
そんな私の気持ちを感じ取ったのか蓮二がいくら精市でも無理強いはしないから大丈夫だと小声で呟くと私の頭を撫でた。
(それはそうと、お前等はイチャつき過ぎ)
(そんなつもりはないが…なぁ、早苗?)
(えぇ、普通だけれど?)
(…最近、お前等ホントにムカつくよね)
(精市は、イライラし過ぎだ)
(お前等もその原因なのわかってる?)
(これでも自重しているぞ)
(あぁ、璃亜からかって来ようかな)
(イライラ解消に好きなヤツをからかうのはどうかと思うぞ)
(うるさい。半分くらい璃亜のせいだからいいんだよ)
(ふふ、幸村くんって案外子供っぽいのね)
(…なに?喧嘩売ってる?)
(ふふふ、別に?)
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