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そして片付けと仕込みが終わり、ひーちゃんの方を見ると真剣に手帳に何かを書き込んでいたので邪魔をしない様にゆっくりと少し離れたところに座る。
ひーちゃんがソファーの前にいるのでソファーに座れないのである。
うん、やっぱり真剣に何かをしてる時ってカッコイイね。テニスの練習とかで、なかなか曲作りに時間取れないんだろうなぁ。
なんて思いながら、ひーちゃんを見ていた。
*****
…あかん、普通に集中してもうた。ゆっくりと顔をあげるとジーッと俺を見とる璃亜さんがおった。
ちゅーか、片付け終わったなら声掛ければええのに…待っとったんか。結構な時間、集中しとったのに。
「ん?あ、気にせず続けていいよ?3時くらいになったら声掛けるから」
「いや、後は帰ってからPCに打ち込むんでええッスわ。ちゅーか、なんでそない離れとんの?」
「いや、集中してたから邪魔しない様に」
「ほなら、もう大丈夫やからこっち来てや。まぁ、来ないなら俺が行くからええんやけど」
「いや、まぁ…別に行くけど。あ、でもちょい待ち!少し早い気がするけど忘れる前に」
「なん?」
ゆっくりと璃亜さんが俺んとこに移動して来ようとしたんに、何かを思い出したのか急に立ち上がるとキッチンへと向かって行った。
そして暫くするとお盆にお椀を2つ乗せて戻って来て、頭を傾げる。
そんでそれをテーブルに置かれ、ズイッと目の前に差し出されて目を見開く。
な、ちょ…なんでやねん。
「はい。お腹いっぱいなら無理して食べなくていいんだけど、ひーちゃんが好きだって言ってた白玉ぜんざい」
「え、はっ…作ったん?」
「買い物中に白玉粉が目に入ってさ、そう言えばひーちゃんが合宿中に白玉ぜんざい食べたいわーって言ってなぁって」
「…覚えとったんスか」
「合宿中は、白玉粉がなかったからひーちゃんが白玉ぜんざい好きなのに料理作った時に出してあげられなかったからさ」
ぜんざいは、茹で小豆缶使ったから手抜きになっちゃったけどねぇ…と少しすまなそうに笑う璃亜さん。
なんちゅーか…なんやねん、この人。あかん、なんかもう…俺のツボしか突いて来んのやけど。
せやから、作る時も片付けん時も俺に手伝わせんかったんか。あぁ…あかん、この人メッチャ可愛えわ。
なんや、可愛過ぎて逆に腹立って来たわ。
「あ、やっぱりお腹いっぱいだった?ごめんね。さすがにご飯代わりに出すのは気が引けっ…わっ!」
「なんやねん、ホンマ…腹立つわ。んなの、食べるに決まっとるやんけ」
「ちょ、えっ…怒ってんの!?い、いや、無理しなくていいから!明日の朝御飯にするし!」
「あかん、俺が全部食べるわ」
「えっ!?ぜ、全部!?確かに、そんなに量はないけど…全部!?」
すまなそうに笑う璃亜さんを腕を引き寄せて抱き締めると俺の腕ん中でバタバタ暴れながら、なんや騒いどる。
ちゅーか、俺の為に作ったんなら食べんのは当たり前やろ。むしろ、全部食わせろっちゅー話やわ。
正直、俺は甘党やし。白玉ぜんざいなら余裕や。
ちゅーか、ホンマ帰りたないわぁ。
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