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まぁ、蔵は人前で泣くタイプでは無さそうだけどね。
とりあえず、もう大丈夫かな?ゆっくりと寄り掛かっていた壁から体を起こして蔵の方を向く。
うん、今度はちゃんとあたしの目を見てくれてるし、大丈夫かな。
「じゃあ、あたしは先に戻ってるね?蔵は、落ち着いてからゆっくり来ればいいから」
「もう行くん?」
「1人になりたいでっ…うわっ!?」
「璃亜ちゃんが胸貸してくれるんちゃうん?」
「いや、これだとあたしが胸を借りてる状況なんだけど」
「せやけど、璃亜ちゃんちっさいから無理やんか。せやから、これでええんよ」
失礼な、これでも女子の平均よりかなり高いんだぞ。
とりあえず、蔵に抱き締められてる訳だが…胸を貸してやろう!と言ったのはあたしなので、これが胸を貸してる状況と言うなら大人しくしてよう。
いや、貸してないんだけどね。普通にこれだとあたしが借りてる状況だからな。まぁ、身長はさすがにどうにもならないから仕方ないけど。
「璃亜ちゃんは、ホンマ変な子やな」
「ちょ、失礼過ぎる」
「普通は、完璧な男の方がええって言うやろ」
「えぇ、完璧な人って寂しくない?お互いに完璧じゃないからこそ、支え合ったり出来るんだと思うんだよね」
「…やっぱり変や」
「なんでだ!」
本当になんでだ!
いや、まぁ…変な奴とか言われ慣れてるけどさ。でも今回は、そんなに変な事は言ってないと思うんだけど!
そしてそろそろ離してくれないかなぁ。しかも泣かねぇんかい!だったら胸を貸す意味はあったんだろうか!いや、貸してねぇけど!
とりあえず、あたしが顔を上げるとそれに気付いたのか蔵がゆっくりと視線を下げる。
「璃亜ちゃんからもぎゅーってしてくれへん?」
「ん、今回だけね」
「璃亜ちゃんは、俺な完璧やなくてもちゃんと見てくれとるもんな」
「んー?あたしだけじゃないよ。四天宝寺のテニス部のみんなは、蔵をちゃんと見てるよ」
「ハハッ、せやなー。みんな俺の事、めっちゃ好きやからなー」
「それひーちゃんに言ってみ。キモいッスわってドン引きされるから」
「あかん、絶対言われる。せやけど、みんなにも礼言わんとな」
まぁ、でもひーちゃんはなんだかんだで蔵を心配してたからね。全く、あたしの周りは先輩思いの後輩ばっかりだな!
とりあえず、蔵の気が少しでも軽くなったならよかったよかった。なんかあたしの頭撫でる余裕も出て来たみたいだし。
「璃亜ちゃんには、ホンマに助けられてばっかりやなぁ」
「いや、あたしも赤也の事で蔵に助けて貰ったし」
「いやぁ、あれはちゃうやろ」
「あたしが助けて貰ったと思ってるからいいの!てか、そろそろ戻らないとさすがにヤバいと思うんだけど」
「ハハッ。せやな、幸村くん達にも謝らな。璃亜ちゃんありがとうな?なんか吹っ切れたわ」
「どういたしましてー!よし、戻ろう!ダッシュで戻ろう!!」
そしてゆっくりとあたしを離すと蔵が柔らかく笑いながら頭を撫でた。
お、おぉ…なんかドキッとしたが、今はそれどころではない!
とりあえず、あたしは蔵の腕を掴みコートへBダッシュした!!
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