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あぁ、本当に幸村くんが試合するんだ。なんか待ちわびた感が凄い。
「ゆ、幸村くん!」
「ん?どうしたの」
「頑張ってね!あたし、見てるから!」
「ふふっ、ありがとう。そうだ、璃亜…こっちおいで」
「ん?なに?」
ちょいちょいと手招きをされて、幸村くんに近付くとグイッと腕を引かれて危うくベンチ側に落ちそうになった。
そして幸村くんがあたしの耳元で囁く。正直、凄いゾクゾクしたけどそれどころではない。
幸村の言葉にバッと顔を上げると後ろにいた仁王に持ち上げられて、幸村くんのいるベンチに下ろされた。
「はっ!?」
「ふふ、仁王と柳生も賛成してくれてね」
「1番近くで見ときんしゃい」
「えぇ、楠木さんにはそこで見ていただきたい」
「ふふ、来年は予約済みだから今年は璃亜にってね」
"
コートベンチよろしく"
幸村くんは、確かにそう言った。
詳しくは知らないけど…普通、ここに座る事が出来るのは部長の幸村くんや真田くんだけなはず。
故にあたしがここに座るのはどう考えてもおかしい。
いや、ダメでしょ!と幸村くんに訴えるがいいからそこに座って見てなよ。と言うと肩のジャージを揺らしながらコートに向かって行った。
「大人しく座ってんしゃい。お前さんが1番近くで見られるんは今回が最初で最後ナリ」
「いや、それの意味もよくわからないんだけど!?」
「来年は、そこに赤也を座らせるんじゃよ」
「だから、今年は色々と我々の助けになって下さった楠木さんを…と」
「いや、だからって…」
「いいから、部長の勇姿をしっかり見ときんしゃい」
未だにギャーギャーと騒いでる赤也達の方を見れば、真田くんや柳くんがコクりと頷いていた。つまり、2人も座っていいって言ってるのか。
来年は、赤也って言うのもよくわからなっ…来年?
………あぁ、そういう事か。
なるほど、ならお言葉に甘えようかな。ゆっくりとベンチに座りながら、跡部くんと会話を交わしている幸村くんの背中を見つめる。
「もう来年の事、考えてるなんて…さすがだね。幸村くん」
「俺等の部長は、後輩思いじゃき」
「その後輩も先輩思いだけどね。よし、幸村くんの勇姿を目に焼き付けよう」
「はい、そうして下さい」
「あの跡部が相手じゃが、問題ないじゃろ。しっかり見ときんしゃい」
そう言って、あたしの頭をぽんぽんと撫でると仁王と柳生くんも席に座った。
ちなみにギャーギャー騒いでた赤也達は、真田くんに怒られたらしく静かになってた。
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