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っ…、あの目が怖い。
あの無駄のない動きで難なく返球してる白石くんに自然と体が強張る。
「ふふふ、大丈夫だよ璃亜。真田は、このくらいで負けたりしないから」
「ゆ、幸村くん…」
「うむ。辛そうではあるが、見てみろ笑っている」
「あちゃー真田副部長が高笑いしてる」
「スイッチ入っちゃったぜよ」
「これは、久し振りに真田くんの本気が見れそうですね」
まぁ、あぁなった真田なら大丈夫だから心配すんなと隣に座っているブン太があたしの手を握る。
なんだかよくわからないけど、確かにコートを見れば真田くんはとても楽しそうに高笑いをしていた。
でもなんかちょっと怖い。
なんだこの異様な試合。
そして1度ベンチに戻って来た真田くんは、それはそれはとても楽しそうに笑っていた。
「ごめん、白石くん以上に真田くんが怖くなってきた」
「あれが絶好調の印だから気にせんでよか」
「相変わらず、追い上げ方がえげつねぇぜぃ。ま、白石も焦って攻める程バカじゃねぇから冷静だけど」
「真田副部長、楽しそうッスね〜。俺も白石さんと戦いたかったッス」
「ふっ、赤也はまだやめとけ」
とりあえず、さっきの空気が嘘の様に安心して試合を見る事が出来ている。
あたしまだ全然慣れてないんだな…てか、全然テニスを知らないんだなぁ。
そんな事を考えながら、楽しそう試合をしてる真田くんと白石くんを見つめた。
―――
――――
―――――
そして30分に渡るタイブレークの末…
「ゲームセット!ウォンバイ立海大付属、真田7-6!」
「アカン、真田くんむっちゃ強いわ」
「フンッ、貴様もな!」
真田くんが勝った。
真田くんも白石くんも身体中ボロボロでギリギリまで戦ってたのがわかる。
て言うか、ずっと緊張状態だったせいで一気に疲れが…
フラりと隣に座っていた早苗に寄り掛かると早苗が驚いた顔をしてあたしの頭を撫でた。
「ふふふ、気の抜けた顔してる」
「…なんかすっごい気が抜けた。真田パパにお疲れ様って言いたいのに…気が抜けてやばい」
「ククッ、ふにゃふにゃじゃな」
「だって、嬉しいもん」
「ほれ、真田戻って来たから言ってやれよぃ」
後ろからあたしの顔を覗き込んで笑っている仁王と隣で呆れた様に笑っているブン太があたしを起こしてくれた。
そしてボロボロになりつつも成し遂げたぞ!と言わんばかりの顔をしている真田くんに飛び付いた。
(真田くん!お疲れ様っっ!!)
(お、おぉっ!?あ、危ないだろうが!)
(ふふふー!嬉しい!真田くん凄かった!)
(な、なななっ…!あ、当たり前だっ!)
(ふふふ、真田気持ち悪い)
(真田、顔真っ赤だぜ〜い?)
(ククッ、酷い顔じゃな)
(き、貴様等!お、おいっ…楠木!)
(え?なになに?へへへ〜)
(璃亜先輩、喜び過ぎっしょ)
(これは面白いデータだ)
(ふふふ、本当に嬉しそうね)
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