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そして仁王はその後、フェザーヘヴンを打つ事はなかった。柳くんの話によれば、データを録られない為と連発出来ない技だと思わせる為だとか…

うん、やっぱり凄いや。


「ゲームセット!ウォンバイ立海大付属、切原・仁王ペア6-3!」

「敵にするとホンマ怖いやっちゃな。せやけど、次は負けんへんで」

「プリッ」

「…切原の顔、ホンマ腹立つわぁ」

「へっ、文句は勝ってから言えよ!」



そして嬉しそうに走って戻って来る赤也は、あたしに飛び付く。いつもならここで怒るけど、今日は特別だ。

ぎゅーっと抱き締め返して頑張ったね!と言うとはいッス!と嬉しそうに頷いた。

そしてふぅ〜暑い暑いと汗を拭っている仁王にタオルを差し出す。



「…あ、あの、一緒に試合出させてくれてありがとう。それとお疲れ様」

「ピヨッ。惚れてもいいぜよ?」

「いや、それはないわ」

「随分バッサリいったな」

「アハハッ!仁王、ざまぁ!!」

「まーくん頑張ったのに傷付いたナリ」



とりあえず、汗だくで泣き真似をしてる仁王を無視して…次の試合に出る真田くんに拳を突き出す。

そしてチラリとコートを見れば、白石くんが真剣な顔でこっちを見ていた。いつも、ふざけている白石くんの鋭い眼差しに少しだけ怖くなる。

しかしそんなあたしの気持ちを悟ったのか真田くんが結構な勢いで拳を合わせてきた。ごめん、普通に痛かった。



「案ずるな!確かに、白石は強い男だ。しかし、今の俺に勝てる者はいない!だから安心してそこで見ていろ!」

「やだ…パパ、カッコイイ」

「娘に寄り付く輩を退治しに行く父親かよぃ」

「ハマり役過ぎッスね」

「ふふふ、負けは許さないよ」

「無論だ!」



そして真田くんは、ゆっくりとコートと入って行った。

大丈夫…大丈夫っ…!
真田くんは、絶対に勝つから。


―――
――――
―――――


………う、嘘だ。


「おいおい、真田が0-4?嘘だろぃ」

「白石のヤツ、合宿中1度も本気出しとらんかったからの。あやつ、かなり腕を上げとるぜよ」

「でも副部長が負ける訳ないッスよ!」

「うむ、心配ない」



あたしは、知らない。
白石くんがこんなに強かった事も…真田くんのあんなに辛そうな顔も…

なにもかも完璧に返してくる白石くんに体が震える。まるで幸村くんのイップスを見てる様な気分だ。

…白石くんの無駄な動きのないただの返球が怖い。なんでかわからないけど、スゴく怖かった。


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