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さっきから楠木の姿が見えなくて羽川に聞けば、洗濯しに行ってはずだけど?寂しい?なんて言われた。
別にそういう事じゃないんじゃが…羽川のやつ、最近参謀に似てきとる気がする。
でもそれにしても遅いわね。サボってたりして。なんて笑いながら羽川はまたノートに集中した。
チラリと時計を見ればいつもなら赤也と一緒に騒ぎながらボール拾いをし始める時間だ。
…思い過ごしならいいんじゃが。
トイレに行ってくると一緒に練習をしていた柳生に言って、洗濯干し場に来たが…空のカゴが置いてあるだけで楠木の姿はなかった。
あれでいて真面目にマネージャーの仕事をこなしていた楠木が洗濯を干し終わってカゴをこんなところに忘れていくのは考えにくい。
……何かあったか?
グルリと周りを念入りに調べるが特に変わったところはない様に見える。
………?
しかし少し離れた木陰に不自然に何かを引き摺った様な跡が2本伸びていて、少し考えた結果…最悪な事が起こっていると判断した俺は、報告よりも急いでその跡を追った。
着いたのは、テニスコートから然程遠くない体育倉庫。
内心、そうじゃなければいいなと思っていたが…どうやら当たりらしい。
見張りは、いない様だが微かに聞こえてくる複数の男の声に全てが確信へと変わる。
とりあえず、一刻も早く楠木を助けなくちゃいけないと意外に冷静でいる自分にビックリしつつ体育倉庫のドアを蹴り破った。
そしてそこには、グッタリとした楠木と複数の男がいた。その瞬間、俺の中で何かが切れた気がした。
…冷静?どうやら俺は、最初から冷静じゃなかった様じゃ。気が付いたら全員殺す勢いで殴っとった。
手加減も出来ずに殴ったせいで男等は気を失った。そいつ等を蹴って退かし、随分と寒そうな格好をしている楠木に近付く。
「…もう大丈夫じゃき。目を開けんしゃい」
「…………」
「…楠木?」
「…………」
全く反応がない楠木を急いで抱き抱えると驚く程に体が冷えていてゾクリとした。
そうじゃ…こやつは、寒いのがダメなんじゃった。こんな寒い倉庫の中で下着のみで居たら…すぐに羽川を呼ぶか?
いや、今こやつを一人にしたら危ない。かと言ってこのままの姿で連れていけん。
そして俺は、キッと気を失っている男を睨んだ。
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