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汗を流しながらヘラヘラと笑いながら戻ってくる楠木に羽川が軽く頭を叩かれつつも余り気にしていない様で、幸村に借りていたラケットを返すとふぅ…と何事もなかったかの様にベンチに座った。
「…赤也、お前見たかよぃ?」
「…バッチリ見たッス」
「黒じゃったな」
「に、仁王くんっ!」
「た、たるんどるっ!!!」
「俺は、何も見てねぇ…見てねぇぜ」
何を隠そう、最後に楠木が打ったショットは、氷帝の向日のムーンサルトに似ていて軽々と宙を舞った楠木は、制服だったのでスカートの中が丸見えだった訳じゃ。
しかし等の本人は、気付いていないのか恥ずかしがる素振りも見せずに荒い息を整えるように深呼吸をしとる。
ちなみに幸村は、クスクスと笑いっぱなしじゃ。
「ふふふっ…随分と楽しんでたみたいだね。初めてのテニスは、どうだった?」
「ん〜よくわからないけど楽しかったかな?負けちゃったけど」
「ならよかったよ。でも最後のショットは、いただけないな」
「え?あれって反則になるの?」
「ある意味反則かな。あれがアウトじゃなかったら赤也は、取れなかったかもしれないし」
確かに。赤也の事だから呆然として取れなさそうじゃ。
と言うか、制服のままでテニスする事自体がよくないと思うんじゃが。まぁ、今更何を言っても無駄なんじゃがのぅ。
それにしても…
「お前さんいい顔するのぅ」
「えっ…なにそのセクハラ発言」
「楽しくて仕方ないって顔しとったぞ」
「べ、別に普通だし!てか、久し振りに体動かしたから仕方ないじゃん!」
「誉めとるんじゃがのぅ。それと少し女の自覚をした方がいいぜよ」
チョイチョイと下を指すとなんだよ?と訝しげな顔をしつつスカートを見つめて頭を傾げるとあっ…と小さな声が聞こえたかと思うとバッと顔を上げるとスタスタとテニスコートを出て行ってしまう。
そんな楠木に羽川は、ため息を吐いていた。
「あいつ顔真っ赤だったぞぃ」
「やっぱり楠木先輩可愛いッス!」
「ふふっ…彼女は、本当に色々と警戒心が無さすぎるね。そこがいいところだけれど」
「あれでも結構恥ずかしがり屋だからあんまりいじめないであげてね?」
「いじめてるつもりは、ないんじゃがのぅ」
と言うか、羽川が制服でテニスし始めた時に止めればよかったんじゃなかろうか。
まっ、いいもん見れたけん…俺としては有り難いぜよ。
そして暫くして、落ち着いたのかいつもの仏頂面で楠木が帰ってきた。
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