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あたしは部室に戻り、急いで救急箱を持ってテニスコートに戻った。
「切原くんっ!うわっ…痛そうだな」
「わっ…楠木先輩っ?!」
「怪我したんでしょ?ほら、手当てするから動かないで」
「え、あっ…はいッス」
「てか、救急箱用意しとくの忘れてた。ごめんね」
急にあたしがテニスコートに入って来たせいで部員がザワザワとするがとりあえず、今は切原くんの手当てが先だ。
本当ならタオルと一緒に救急箱も置いておくはずだったんだけど、あたしが普通に忘れてた訳で…
そんなに時間は経っていないみたいだけど血が固まりはじめてるのを見る限り、手当て出来ずにこうしてベンチに座っていたのだろう。
悪い事したなぁ。と思いながら水で濡らしてきたハンドタオルを傷口に当てる様にして血や泥を拭き取る。
「ちょ、それ先輩のじゃないッスか?!」
「いいから黙ってなさい。痛いと思うけど泥とか砂入ってたら困るから我慢して」
「うっ…はいッス」
時々、切原くんが痛みを耐えるような声を出していたが気にせずに傷を手当てした。
て言うか、血が凄かったからもっと酷い怪我かと思ったけど思ったより軽くてよかった。
最後にガーゼを貼って手当ては、終了。
「はい、この後も練習するんでしょ?傷は浅いし、血は止まったけど無理はしない様にね」
「はいッス!」
「なーんか、怪我したくなってきたぜぃ」
「あやつのあんな真剣な顔は、初めて見たのぅ」
「楠木さん、赤也の手当てありがとう。それとドリンクも完璧だったよ」
あ、やべっ。
手当てに夢中で忘れてたけど、今は練習中だった。ゆっくりと振り返るとなんでだよ!?と言いたくなるくらいギャラリーが出来ていて…
部員があたしをガン見している。
こえーよ。練習の邪魔してすいませんした。だからこっち見ないでください。
「ふふふっ…そんな顔をしなくても大丈夫だよ。そろそろ休憩だしね。楠木さんも休むといい」
「えっ…あー、うん」
「楠木先輩が作ったドリンクいただきッスー!」
「俺も貰うぜぃ。お、これこれ!この味だぜぃ!」
「うむ、悪くないのぅ」
「いや、ただのドリンクじゃん」
何故か意気揚々とドリンクを飲んで騒いでいる切原くん達を冷めた目で見ていると早苗と柳くんがお疲れ様と言ってくれた。
いや、うん。
てか、君達仲良すぎだろ。
別にいいけどさ。
(あ、ジャッカルくん!はい!)
(お、サンキュ)
(なんでジャッカルだけ手渡しなんだよぃ!)
(やぎゅーくんもどうぞ!)
(ありがとうございます)
(こちらこそさっきありがとね!)
(やーぎゅ…さっきってなんの事ぜよ?)
(大したことでは、ありませんよ)
(ふふふ…みんな楽しそうだね)
(た、たるんどるっ!)
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