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先程の顔が嘘の様にいつもと変わらない眠たそうな顔をして歩く、自分の先輩をチラリと見る。

チッ…これだからこの人は、苦手なんだ。思い立ったら即行動、やりたい事はやる。

素直で真っ直ぐな分、達が悪い。


俺と丸井さんに向けられた、アレは…完全な敵意だった。璃亜さんは、バカだから気付いていないみたいだったが。

まるでこれは、俺のだからと言わんばかりの顔だった。それに加えて…璃亜さんが無防備なのをいい事に首元にキスする始末だ。

それにはさすがの璃亜さんも驚いてたが…正直、驚いたのはこっちだ。

……このまま、この先輩を放置していいのか。否、ダメだ。俺の気がおかしくなる。

それでなくても、あの人は他の奴等とも仲が良く…距離が近いんだ。



「俺、ぴよCみたいに我慢するの嫌いだから」

「なっ…」

「俺、璃亜ちゃんが笑ってるのが好き、頭を撫でてくれるのが好き、近くにいてくれないとやだ」

「…急になにを言い出すんですか」

「だから、ぴよCにも璃亜ちゃんはあげないって意味だC〜」



…丸井さんに続き、俺にまで宣戦布告ですか。

そう言いながらいつもの様に笑う先輩は、思っていた以上に璃亜さんに執着していた様だ。

その気持ちが爆発したのは…恐らくあの越前に璃亜さんがキスをされた辺りか。

あの日から確かに、この人がイライラとしている気がしていたが…

"あんまりジローを刺激すんなよ"

刺激するもなにも…既に手遅れなんですが。しかし、それに気付いていて止めなかったのは、俺は別に余裕だと言う事ですかそうですか。

全く持って、厄介な先輩しかいない。しかも、この人は抜けている様で抜け目がない。



「ん〜でも俺、みんなと仲良くするのも好きだC。ぴよCの事が嫌いとかじゃないよ?」

「別になにも言ってないんですが」

「ん〜?丸井くんもぴよCも好きだけど〜璃亜ちゃんは譲りたくないなぁって」



喋り方こそ柔らかいがそこには、完全な敵意がある。

確かに、氷帝の中では璃亜さんと一番接触してるのは俺か向日さんだろう。

それにこの人は、それを一番近くで見ていた訳だ。敵意を持たれて当たり前だ。

まぁ、正直に言うと俺以上にマークすべき人は他に山程いるのが現状だがな。


チッ…本当にあの人は、こっちの気も知らないで全く厄介な人だ。


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