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そして無我の境地で多彩な技を繰り出している赤也だが、それを難なく返してくる幸村くんと跡部くん。
…恐ろしいな。
そして遂に、ずっと静かだったわかちゃんが動き出す。
「あの日吉が…いつもより動き出すの早い」
「え、待って待って。ちょたくん、わかちゃんも無我の境地を出来たの!?」
「え?あっ、はい。氷帝で無我の境地を使えるのは部長と樺地、そして日吉ですよ」
「…うわぁ…去年の全国大会思い出した…」
「まぁ、決勝で戦っとったのあの2人やったしな」
ごめん、話に付いていけねぇや!え?わかちゃんも無我れんのにもびっくりだけど、去年の全国大会!?
つまり、中学の時って事だよね?え、なにそれすげぇ気になるんだけど。
そんな事を思っているとわかちゃんが動き出した事に気を良くしたのか、跡部くんまで無我った。
なにこの無我合戦!
キラキラし過ぎ!眩しいわ!
「でも…無理そうだね。この無我の境地の3人に紛れて…冷静に淡々に…プレイしてる幸村さん。切原は、精神的に…圧力が凄いはず…」
「…これやから、あの立海の部長は怖い言われとるっちゅー話ッスわ」
「だな。さっきから切原の動きが変だ…」
「もう奪われてるんでしょ。無我の状態だから辛うじて反応してるけど」
「これさぁ〜、日吉の五感が奪われるのも時間の問題じゃない?」
幸村くんは、跡部くんと違って大技を出すわけでもなくただ、冷たい目で淡々とボールを返しているだけに見える。
それが更に精神的に赤也とわかちゃんを追い詰める。そして徐々に幸村くんのイップスにハマっていく。
わかってた事だけど…やっぱり見てて辛い。
そしてイップスにハマった2人は、辛うじて反応してるけど全く相手にならない。
五感を全て奪われている訳では、無さそうだけど…辛そうな2人の表情に正直、試合を止めたくなる。
「…璃亜さん?もしかして、幸村さんのイップス見んの初めてやった?」
「…いや、軽い感じのは見た事あったけど」
「まぁ…あれは…見てても…辛いよね。本人達は…辛いってもんじゃないだろうけど…」
「え、マジで璃亜さんが泣きそうなんだけど。大丈夫?」
「だ、大丈夫だし。赤也とわかちゃんが頑張ってるのにあたしが泣く訳なかろう!」
「声、震えてるけどね」
「う、うるさいやい!赤也ー!わかちゃん!頑張れー!」
結局、あたしが出来る事なんて気休めに応援する事しか出来ない。
正直、2人にあたしの声が聞こえてるのかわからないけど。最後まであたしは、2人の勇姿を見てるからと言う意味も込めて。
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