つまり拒否権はない (1/5)
あの日、あたしはマネージャーを断ったはずなんだけど…。
「楠木さん、今日こそマネージャーになって貰うよ」
「いや、毎日来ないで下さい」
「こうなった幸村くんは、しつこいぜぃ?諦めてマネージャーになれよぃ」
「羽川からも許可出とるんじゃろ?なら、なりんしゃい」
「赤髪と銀髪は、黙ろうか」
何故か、幸村くんが休み時間の度にこうして教室に来てマネージャーになれと言ってくる訳だが。
どうやら、早苗は柳くんに説得されたらしくあたしがやるなら手伝うとか言ってるしで…なんかもう半ば強制的にマネージャーをやらされそうである。
でもあたし的には、マネージャーをやる理由も無ければ、やりたいとも思わない訳で…
「うむ。ならお試しで1週間マネージャーをしてみるのはどうだ?」
「うわ〜柳くんまで来ちゃったよ。しかもまた意味のわからない事を…」
「うん、それでいいよ。じゃあ今日から1週間お試しでよろしくお願いするね」
「え、ちょ…」
「来なかったら…覚悟しておいてね?」
ひえー…なんか凄いダークスマイルを見た気がする。と言うか、拒否権なしですか…そうですか。
まぁ、もうなんか色々と面倒臭いし1週間くらいなら別にいいかな。
はぁ…とため息を吐くと何故か頬に何かが突き刺さり、ゆっくりと顔を動かすと銀髪が何食わぬ顔であたしを見ていた。
「ピヨッ」
「……意味がわからない」
「とりあえず、やってみんしゃい。それで無理なら幸村も諦めるじゃろ」
「やる前に諦めて欲しかったんですが、それは」
「なんでだよぃ!俺の天才的妙技を見せてやるぜぃ?」
「あーはいはい」
はぁ…ホントになんでこんな事になったんだろうか。あー全ては、あの日に席替えをしたのがいけないんだ。
担任め…!
あ、でもクジだった。
あたしのくじ運の悪さがいけないのか?いや、違うし。あたし悪くねぇし!席が悪いんだし!
「ブン太、ほら、ポッキーだぜ。取りに来ないから持ってきたぞ」
「おージャッカル!サンキュー!ちょうど腹減ってたんだよぃ」
「よう。またブン太が迷惑掛けてるみたいで悪いな」
「…ジャッカルくんっ!」
「お、おう?どうした?」
「あたしジャッカルの為に1週間頑張るわ!」
赤髪にポッキーを渡しながら、あたしにすまなそうに笑い掛けるジャッカルくんに涙が出そうになったよ!
なんでジャッカルくんが隣じゃないんだ!あ、クラス違ったわ。いや、もうなんでもいいや…とりあえず、あたしはジャッカルくんの為に1週間頑張ると心に決めた。
むしろ、ジャッカルくんのマネージャーなら悪くないかもしれない。
ギャーギャーと赤髪が騒いでいたが無視してそんな事を考えていた。
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