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近道を使ったおかげもありブンちゃん達より先に着いたのはいいが、本当に呼び出されてたらしく何人もの女に囲まれている楠木を見付けた。
暫くして、ブンちゃん達も着いて静かに見守っていると相変わらず意味のわからない事をギャーギャーと言っているのが聞こえる。
「ホント意味がわからないッス」
「今更ぜよ」
「ファンクラブってこんなに人いたんだ。知らなかったわ…」
「それより早く止めねぇとだろい」
「いや、少し様子を見るぜよ。今、下手に俺等が出て行ったら余計ややこしくなるじゃろ」
事実、俺等のせいでもある訳じゃからな。ブンちゃんは、うっ…と小さな声を出すとわかった…と渋々といった感じで大人しくなる。
赤也に関しては、今すぐにでも飛び出して行きそうだったから仕方なしに俺が押さえちょる。
「はぁ…で?話は、終わり?あたしご飯の途中だったんだよね。もう帰っていい?」
「なっ…!ファンクラブに入らないつもりなの?!」
「はぁ?別にファンでもないのになんで入らなきゃなんない訳?てか、いい加減ウザいんだけど」
「ファ、ファンじゃない…?」
「いいえ、違うわ!ファンじゃないフリをして抜け駆けするつもりなのよ!この卑怯者!」
…なんちゅーか。さすが楠木ってところじゃな。穏便に済ませるという選択肢はないんじゃろうか、あやつの頭には…。
それにしても、このキチガイ集団も相変わらず変わらないのぅ。フリをして抜け駆けするつもりねぇ?まぁ、俺も最初はそう思ってたんじゃが…
「あーはいはい、どうぞご自由に。て言うか、ファンクラブなんだか知らないけど、そんな事してその大好きなテニス部の奴等を縛ってるのはあんた達って事に気付いたら?」
そんな事を考えていると不意に聞こえた楠木の言葉にドキリとした。そしてそれとほぼ同時に押さえ込んでいた赤也が声を荒げて俺の腕から逃れ飛び出して行き、バッと楠木の方を見れば今まさにビンタをされる瞬間だった。
そしてバチンッと乾いた音がした。
「楠木先輩っ!」
「なんで君がいるんだし」
結果的に楠木は、ビンタをされてその場で倒れ込んでしまった。赤也は、そんな楠木に駆け寄りキチガイ集団を睨み付ける。
さすがに赤也が出て行ってしまったからのぅ、何より手を出した訳だし黙ってる訳にも行かず俺やブンちゃんも出て行こうとしたがポンっと肩に手が置かれ、ふぅ…とため息を吐いた。
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