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それにしても…逃げる事を第一に考える様にって言われたってねぇ?
屋上の出入口は、月城さんの後ろだし。
天龍寺さんを逃がすには、月城さんをどうにかするしかない。
「…あんた、可哀想だね。偽りの好意を向けられて嬉しいとか」
「うるさい!みんな私を好きになるのよ!私は、幸せよ!」
「あんたはそれでいいかも知れないけど、そのせいで悲しんでる人もいるんだよ!」
「そんなの関係ないわね!私は、この世界のお姫様だもの!なにをしても許される!許して貰える!」
「ハハハッ、許される?誰があんたを許そうとあたしが許さねぇし。あんたのせいで泣いてる子がいるんだよ!人の気持ち無視して好き勝手しやがって…誰もあんたなんか好きなんねぇよ!!」
「うるさい!うるさい!!うるさい!!!あんたが一番目障りなのよ!!」
怒りに任せて月城さんがあたしに向かって走って来る。
しかし、流石に不意打ちじゃ無ければ当たったりしない。動きは鈍いし、闇雲にナイフを振ってるだけだし。
それでも月城さんは、あたしに向かってナイフを振り続けた。それを真っ青な顔をして見ている天龍寺さんに向かって叫ぶ。
「早く逃げて!あたしは、大丈夫だから!」
「で、でもっ…!!」
「いいから、早く!!」
この距離なら仮に月城さんが天龍寺さんを追い掛けても絶対に間に合わない。
泣きそうな顔をして屋上の出入口に走って行く天龍寺さんに安心しつつ、目の前で鬼の形相であたしを睨んでいる月城さんに向き直る。
「私は、お姫様なのよ!!あんたなんかに邪魔されて堪るもんですか!!」
「…疫病神の間違いじゃねぇの?青学はテニスが強かったって幸村くん達が言ってたのに弱くなった。四天宝寺は、あんなに仲良かったのにあんたのせいで金ちゃんが泣いてた」
「だからなによ!私には関係ない!!」
「みんなテニスが好きで、テニスをする為にこの合宿に来てんのにあんたのせいで出来ねぇんだよ!真面目に練習してるヤツの邪魔すんな!」
「うるさい!死ねぇ!!」
「本当にテニス部の奴等が好きなら邪魔すんじゃねぇよ!」
ずっとあたしが思ってた事だ。
逆ハーとやらがやりたいなら勝手にやればいい。だけど、人の気持ち無視してんじゃねぇよ。普通に好かれる様に努力すりゃあいいじゃん。
好かれたいだけならテニス奪う必要ねぇじゃん。
そして長いこと、月城さんのナイフを避け続けた結果、フェンスまで追い詰められてしまった。
…それに左肩も痛い。
そして月城さんがナイフを振り上げ、避け様とした瞬間何かがあたしにぶつかって来た。
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