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そして無言であたしの手当てをする仁王。なんか空気がすげぇ重いんですけど。
まぁ…あたしが悪いんだとは思うけど。てか、マジで手当てする程の怪我じゃないんだけどなぁ。
「ん、終わったぜよ」
「あ、ありがと」
「ほれ、寝んしゃい。俺も部屋に戻るぜよ」
手当てが終わり、仁王がゆっくりと立ち上がる。そして何事もなかった様にあたしに背を向けた。
しかも目も合わせねぇの。
てか、あたしが寝るまで見張ってるんじゃなかったのかよ。いや、別に見張れても嫌だけど。
そんな事を思いつつ、仁王の背中を見つめていると不意に仁王が振り向いた。
「やっぱり、お前さんは俺等を頼らんな。好かれとるとは思ってなかったがお前さんにとって俺等はその程度だったんじゃな」
「…は?」
「俺は、お前さんの力にはなれんみたいじゃからの。役に立てん奴ですまんな」
そう言って仁王は、すまなそうに笑うとゆっくりとあたしに背を向けてドアに向かっていった。
いつもの猫背でいつもの背中なのになんか凄く小さく見えて、知らない内に仁王の背中を追い掛けてて、気付いたら腕を掴んでいた。
そしてそんなあたしの行動に珍しく驚いた顔をしている仁王だったが、一番ビックリしてるのはあたしだったりする。
「え、あっ…ち、ちがくて。なんか…ごめん」
「……………」
「確かに仁王の事は好きじゃないし、むしろウザいしムカつくけど…信用してないとかじゃなくて」
「……………」
「なんて言うか…頼るってよくわかんないんだよ。自分で出来るって…平気って思っちゃうから。だ、だから…」
「…もういいぜよ。お前さんが意地っ張りで素直じゃないのかわかってたしの」
自分でもなにが言いたいのか、なにを伝えたいのかわからなくて困っていたら仁王が呆れた様に笑うとあたしの頭を撫でた。
別に頼りたくないとかじゃなくて…やっぱり迷惑を掛けたくないってのが一番に出てくるし。それに、なんて言って頼ればいいのかわからないから。
さっきの仁王の言い方だと、多分仁王だけじゃなくて他のみんなも傷付けたんだと思う。そう考えると凄くすまない気持ちになって自然とうつ向く。
でもみんなには、心配掛けてばっかりだから…
「璃亜は、難しく考え過ぎじゃ。それにのぅ、前にも言ったじゃろ迷惑だとか思っとらんって」
だから、辛いなら辛いって言いんしゃいなんて言いながら優しく抱き締められて、なにも言えなくなった。
それが悔しくて何故か泣きたくなった。
…やっぱり仁王なんて嫌いだ。
(ほれ、もう寝んしゃい)
(……………)
(全く本当に素直じゃないのぅ)
(…うるさいし)
(寝るまでいるから安心するぜよ)
(…それ安心出来ないし)
(そんな泣きそうな顔して強がるんじゃなか)
(…泣いてねぇし)
(泣いてるとは言ってないじゃろ)
(…もう寝る)
(まーくんも一緒に寝ても?)
(おい、調子乗んな)
(勝手に寝るナリ〜)
(え、ちょ、おまっ!?)
(これなら泣いても見えんじゃろ?)
(泣かないし、だから離せ)
(嫌じゃ〜おやすみナリ〜)
((やっぱり、こいつ嫌い…))
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