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う、うわぁ…。
仁王が髪を下ろしているところをまともに見た事がなかったのは、確かだけどさ…
「髪、ながっ!」
「これ、なにをするんじゃ」
「いや、なんとなく。てか、仁王って猫っ毛だよね?パッと見、針金みたいだけど」
「針金って…ワックスじゃろ」
「いや、まぁ…ワックスなのはわかるけどさ。髪の毛サラサラなのに勿体なくね?」
「…勿体無いの意味がよくわからんぜよ」
あたしをベッドに下ろすとヘアゴムを取られた事によりパラパラと流れてくる髪を軽く撫でるとそのままベッドに座る。
いや、なんの躊躇もなくベッドに座んなよ。跡部くん家のベッドだけど、今は一応あたしのベッドだぞ。
しかし、仁王はそんなの気にしてませんと言わんばかりに自分の髪を弄びながらなんだか難しい顔をしている。
「お前さんは、長いのが嫌いなんか?」
「は?」
「いや、だから髪の長い奴は嫌いかって聞いとるんじゃが」
「いや、別に。てか、その人に似合ってればいいんじゃない?知らんけど」
「また曖昧な事を言うのぅ。なら俺は、似合ってるんか?」
「別に似合ってんじゃない?あ、ちなみにがっくんの髪型はがっくんしか似合わない!(確信)」
「いや、向日の髪型は別にどうでもよか」
いや、よくねぇよ!
あの奇抜な髪型をあんなに可愛らしくスタイリッシュに魅せれる人は、がっくんしかいないからね!?
と何故か熱く語りそうになったあたしは、必死に自分を宥めたのであった。
て言うか、髪の長さがなんだってんだ?むしろ、髪の長さが嫌だーとかそいつの勝手じゃねぇか。文句言われる筋合いなくね?
「あ、もしかして女の子にその長い髪やだぁ〜とか言われたの?プークスクス」
「別に言われとらん。むしろ、好きって言われるナリ」
「うわぁ…ないわー。つまんねぇ、はい、解散!」
「お前さんは俺になにを求めとるんじゃ」
「いや、なんも?」
「じゃろうな。ほれ、それ返しんしゃい」
「え?あぁ、はい」
とりあえず、下ろした髪が邪魔らしい仁王は早く返せと言わんばかりに手を出す。
だけど、なんか素直に返すのも癪なので返そうと出した手を咄嗟に引っ込める。もちろん、仁王はなんだ?と言わんばかりの顔をしている。
そしてそんな仁王を無視してベッドの中でヘアゴムを握り締めて、バッと拳を出した。
あれだ!どっちだ?ってやつ。
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