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必死に溢れる涙を拭い、泣き止め泣き止めと思っていると不意に屋上のドアが開く音がしてビクリと顔を上げる。

授業が始まって結構経ってるのに屋上へ来ると言うことは、今までどこか別のところでサボってたのか…?

とりあえず、誰であろうと今見付かる訳にはいかない。ゆっくりと足音を立てないようにして給水タンクの陰に隠れてまた膝を抱えた。

誰が来たのか確認は、出来ないがそいつがペントハウスに上がってきてなんとなく誰だかわかってしまう。

早くどっかに行けと念じながら必死に声を殺していた。しかし、そんなあたしの願いも空しくガシッと誰かに肩を掴まれた。


「………………」


顔を上げる事も声を出す事も出来ず、ただただ膝を抱えたままでいた。

もうこの時点で誰だかわかった。酔いそうなくらい甘い香水の匂い…


「お前さん…何してるんじゃ?」


そう、仁王だ。
こんな悪趣味な甘い香水の匂いが移るくらい女と密着する奴なんてこいつしかいない。

てか、なんで気付くんだよ。
なんなんだよ、帰ってよ。
お願いだから放っておいてよ。



「どうしたんじゃ、具合悪いんか?」

「………………」

「……お前さん、これ読んだんか?」


これと言うのは、跡部くんノートの事だろう。しかもこの口振りだとこいつも中身を知ってるっぽい。

尚更、都合が悪いじゃないか。

てか、こいつはなんであたしが泣いてる時にいつも来るんだよ。嫌がらせかよ、なんなんだよ。


「こんなところで一人で泣いてると羽川に怒られるぜよ」

「……うるさい」

「それでどうするつもりなんじゃ?」


どうするもなにも…
て言うか、なんであたしの頭を撫でんの。なんであたしは、更に泣いてんの。



「…長期入院するんじゃないの。あんた達に関係ないけど」

「関係ない奴に言うにしては、随分と辛そうに話すのぅ?」

「……うるさいっ…」

「…そんな泣くんじゃなか」



今、病院に行ったら入院は避けられないだろう。今までまともに検査もなにもしてなかったんだから当たり前って言ったら当たり前なんだけど。

前なら清々するって…騒がしいテニス部と関わらなくて済むって言えたのに。

脳裏に浮かぶのは、なんだかんだ言いながら楽しかった思い出だった。



「………入院したくないっ…」



なんでそんな事を仁王に言ってるんだって思いながらもあたしの口から溢れたのは、その一言だけだった。





(璃亜大丈夫かな…)
(どうだろうな)
(…様子見て来ようかな)
(いや、今は一人にしてやろう)
(…でも璃亜すぐ無理するし)
(なら次の休み時間に戻って来なかったら様子を見に行こう)
(…うん。そうする)
(大丈夫だ。楠木は強い)
(…うん、わかってる)


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