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そもそも、この人が俺等の気持ちに気付く日は来るんだろうか…と少し遠くを見つめながら思っていると璃亜さんが何を思ったのか嬉しそうに笑った。
「わたしの中でわかちゃんも特別だよ! しかも結構、特別!」
「…はぁ」
「まさかの溜め息!?」
「 "結構" ってどの程度ですか? そもそも、璃亜さんには特別が多いって言ったじゃないですか」
「んー…あんまり順番とかは付けたくないけど、特別の中でも上の方だよ! なんて言うのかなー、ふとした時に頭に出て来る…感じ? 常にではないけど、今何してんのかなーとか」
……なんで、この人はこう…本当にバカなんだ。そして、俺もバカだ。
ヘラヘラと笑いながらそんな事を言い出す璃亜さんに俺は頭を抱えた。
この人はこういう事をサラッと言う様な人だ。しかも、そう思われているのが俺だけじゃないとわかっているのにも関わらず、嬉しいと思ってしまう自分に笑ってしまう。
いや、本当に判断しにくい。
…特別の中の更に特別?
もはや、意味がわからないが…それでも璃亜さんの中では俺の存在はそれなりにあるらしい。
「…俺の中では、璃亜さんだけですけどね」
「えっ、マジで!?」
「そもそも、俺の場合は璃亜さんだから特別なんですよ」
「…ん、ん? お、おう?」
「本当にバカですね」
「辛辣!! でも嬉しいよ!」
「はぁ…そうですか」
本当の意味は何も伝わってない様で、アホみたいにニコニコと嬉しそうに笑っている璃亜さんになんだか笑えてきた。
イラつかないと言ったら嘘になるが、こんなに無邪気な笑顔を向けてくれるならこのままの関係でも悪くないのかもしれないと思ってしまう。
まぁ、そのせいで無性に璃亜さんを困らせたくなったりする訳だが。
自分から勝手に璃亜さんに振り回されてはいるが、何も思ってない訳じゃないからな。だが、変に悩まれて病まれたりしたら困るので、ちょっとからかう程度に留めているが。
「あっ! そう言えば、わかちゃんは明日は何するの? 一応、休日って扱いじゃん? まぁ、普通に練習する人が多いとは思うけど」
「自由参加のチーム練がありますけど…璃亜さんは、何か予定があるんですか? まぁ…毎度の事、色んな奴等に誘われてそうですけど」
「実は、誰にも誘われてないのだ! ていうか、休日なの忘れてたし。チーム練があるから、普通に皆も忘れてる可能性あるよね」
「それはないと思いますけど、璃亜さんじゃあるまいし」
「おいこら失礼だぞ!」
「自由参加ですし、璃亜さんも偵察がてら参加します? リーダーは幸村さんですし、問題ないと思いますけど」
「んー…いやっ! やめとく! 練習の邪魔になり兼ねんし、明日は練習しないで休む事ってうちのチームのリーダーに言われてんだよねぇ」
「なら大人しく休んでで下さい。璃亜さんは、すぐに訳のわからない事をしでかすんで」
まぁ、当たり前か。
普通のチーム練でもかなりハードで璃亜さんにとって、楽なものではないだろうし。
更に色々と思い悩んでいたりと心身共にかなり疲れているだろうからな。特に璃亜さんは、休める時にきちんと休んでおいた方がいいに決まっている。
正直、少し残念ではあるが…璃亜さんに無理をさせる事だけは絶対にしたくないので、本当に大人しく休んで欲しい。
まぁ…この人が良い子に大人しくしてる訳もないだろうがな。
(まぁ、何かあれば連絡して下さい)
(練習中なのに連絡する訳なかろう!)
(何かあればって言ってるでしょう)
(何もないから大丈夫大丈夫!)
(璃亜さんの大丈夫は信用しません)
(それみんなに言われ過ぎて、もはや笑える)
(とりあえず、出掛けたりはしないんですね?)
(しないかなぁ? 用ないし)
(まぁ…ならいいですかね)
※やっぱりわかちゃんは優しい
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